文明の利器たる携帯電話も、今やしごく当然の日用品となり、ボールペンや
ハンカチ等と同じように、無造作にカバンやポケットの中にある。
着信音であれ、バイブであれ、それらさえもが日常化して、今日のこの日を
仕切っている。
僕は突然カベに向って投げつけたい衝動に駆られる。
まるで・・・
時を止めてしまいたい!・・・とでも言うように。
しっかりと
じっくりと
自分と向き合う
自分に語りかけ
自分と論を戦わす
出てきた・・・
煮詰まった・・・
その答えに
僕は従う
それこそが「己」だから
友として
共通項に思いあたる
ふと・・・
寂しげな表情を見せる
ほんの一瞬
僕にはわかる
その因が何なのか
あなたがS極なのかN極なのか
僕がどうなのか
それはどうだっていい
とにかく
引き寄せ合う何かがある
負け犬の遠吠えと
言い放ったのはアナタではあるが
何に負けたというのでしょうか
この落伍者めと
蔑んだのもアナタではあるが
何から落ちたというのでしょうか
土俵がちがう
生き場所がちがう
僕は音量をゼロにする
疲れ果てていることは
だれにも隠せはしないだろう
ふらふらとたどり着いた館の門番が
無表情に立っている
その主に声をかけようとしても
喉の奥に引っかかって
音化することすらできない
無声映画のように
パントマイムのように
試みてはみたが
ど素人に言葉は宿らない
みんなそれぞれにバックボーンがあって
それに支えられて生きている
それが色褪せた時、消え失せてしまった時
営々として積み上げた城は崩れ落ちてしまうのだ
涙の川はひたすらに流れ行くが
そこに浮かぶハンケチを繋ぎ止めるべき葦は
いかにもか細い
笹舟に乗って仰向けになり
あの吸い込まれるような青空を眺めたのは
何時のことだったろう?
大波よ来い!と自虐的に叫んだのは
魂の叫びだったのかも知れない
夕暮れ時は寂しそう…
その赤い夕日におーいと叫ぶ元気は
もう今の僕にはない
住居におれば女になる
家に帰れば嫁になる
里に還れば娘になる
そうして
人気のない夜道の樹の下では
胸にすがってくる恋人になる
男は何で自分を磨くか。
基本は「人間は死ぬ」という、この簡明な事実をできるだけ若いころから意識することにある。
もう、そのことに尽きるといってもいい。何かにつけてそのことを、ふっと思うだけで違ってくるんだよ。
自分の人生が有限のものであり、残りはどれだけあるか、こればかりは神様でなきゃわからない。
そうなってくると、自分の周りの者すべてのものが、自分をみがくための「みがき砂」だということがわかる。
逆に言えば、人間は死ぬんだということを忘れている限り、その人の一生はいたずらに空転することになる。
仕事、金、時間、職場や家庭あるいは男と女のさまざまな人間関係、それから衣食住すべてについていえることは、「男のみがき砂として役に立たないものはない・・・」ということです。
その人に、それらの一つ一つをみがき砂として生かそうという気持さえあればね。
池波正太郎