亡き父に
「おまえは、脱出の名人だな」
と言われた僕ですが・・・
それはかなり昔のこと
つまりは<青春>の裏返しです。
しかし・・・
もしこの技が、今の僕にも宿っているのなら
その名人ぶりを発揮ささたいものだ。
いや、何としても呼び覚まして
この逆境(難局)を突破しなければなるまい。
人の所為にするのは容易いことだ。
世の中や政治の所為にするのも口惜しい。
若いころの<脱出>は
言葉を換えれば<逃亡><逃避>に過ぎなかった。
その場から逃げる、その人の前から消える・・・
それを勝者の言葉に置き換えて
自分を正当化していただけなんだ。
さあ、
今は諸問題を投げ出して逃亡する場合ではない。
這いつくばって
目線は鋭く上に向けて睨みつけ
やがて木っ端みじんに打ち砕き
覆い被さる闇の罠を
鋭い刀で切り開き行こう。
僕が・・・
妻が椎間板ヘルニアということで、まったく動けなくなってしまった。
最初はちょっとした腰の痛みだろう・・・くらいに思っていたのだが
一向に治る気配がなく、かかりつけの病院へ連れて行って検査したら
「椎間板の隙間が狭くなっていて、神経を刺激している」
「まあ・・・時間薬ですね」とのこと。
帰宅してから、僕の家事が始まった。
子供たちのの出産時やら、家内の別の病気以来のことだ。
寝床からの家内の指示に従って、料理やらその他家事全般。
長男出産時、茶わん蒸しを作ったことなど、懐かしく思い出す。
洗濯物干しや部屋の掃除は、もうかなり前から、僕の役割分担なので
さして苦にはならない。
料理もその気になれば楽しいものだ。
新たな発見もあり、自分なりの工夫も生まれてくる。
そうは言いながら、毎食となると、やはりレパートリーは広がらない。
焼き飯、カレーライス、サラダ、みそ汁、そーめん、そんなところか。
もう二週間が経過した。
昨日は、起き上がりが困難なので、折り畳み式のベッドをネットで購入した。
君は無理にきつい言葉を使って
二人の間にラインを引いた
自らに言い聞かせるように・・・
そのラインは何重にも重なって
太く深い溝を形成した
飛び越えられないくらい・・・
飛び込んでも泳げないくらい・・・
温かい泪の河に溺れようかとも思った
それを遮る君の瞳の威圧に
僕は現実に押し返された
それほどまでの思惑だったとは分からなかった
恨ませて・・・憎ませて・・・
そこまでさえも計算の上だったとは・・・ね
僕よりはるか先を走って
ぐるぐると引きずり回して
息切れするこらい探し回らせて
とんでもないご褒美を用意して
驚く僕を笑って覗き込んで
すっと消えてしまった
何なんだよ
君って人は?