終業のチャイムが鳴ったのは、
アルバイトの僕が、丁度車の車庫入れを終えた時だった。
そして、君も作業を終えて作業場から出てきた。
僕には気づかず、ちょっと背伸びをしてから、
後ろに束ねていた長い髪をほどいた。
さらさらの黒髪が、肩に扇のように広がった。
やがて気配を感じて振り向いた君は、
これまでになく大人びて見えて、
僕はハッと息をのんだ。
あまりにストレートすぎて
戸惑った僕
どこまでが本意なのかつかみきれなくて
一喜一憂した僕
そんな僕の心の変動を楽しんでいるかに見えたのに
完璧な心変わりと感じ取ってしまった君
その場しのぎの言い訳や説明がいやで
沈黙の穴倉に潜り込んだ僕
それがまた不信に輪をかけて
僕は崖っぷちに追い込まれてしまったのだった
言葉の無力と沈黙の怖さを同時に知った