職員室 2
みんなが何か被っている
水のように物がいえない
だれかがその圧苦しさを越えようとする
甚だしく卑屈に歪んだ語感がある
それをきっかけに
必然性のない観念論が同乗していく
なにかなじまぬもの
清れつでないもの
消化不良の内臓がかきむしる
混濁血液の錯流だ
不協和音は素通りしていきなさい
私の頭はますますひっこまる
渡部 一夫
職員室
すべての個人的なものが否定される
・・・なんという冷たさだ
どんなに自分だけの真実があろうと
職員室の壁は開いてはくれない
言葉を取り繕おうとするよりかは
出来るだけおし黙っていた方が
かしこいんだよ
真からそれを案じてくれる情(こころ)のないことは
分かりきっているんだから
無理におつきあいで吐き出す言葉だって
みんな自分の身に弁解の蜘蛛の巣を
ぐるぐる巻くことでしかないんだから
苦労話なんかには
職員室の天井は高すぎるんだよ
いやその苦労話にしたって
ほんとに訴えなきゃならぬ根拠があるかないかさえ
あやしく
煙のように薄れていってしまうんだから
だが
この圧迫するもの
この表べだけを「同情」につくって
圧迫してくるものを
どこかで
がっちりと
握る手はないものであろうか
とにかく
そこは
冷徹きわまりなき情(こころ)の刑場(しおきば)
(渡部 一夫)