かなしみは
わたしを強くする根
悲しみは
わたしを支えている幹
かなしみは
わたしを美しくする花
かなしみは
いつも湛えていなくてはならない
かなしみは
いつも噛みしめていなくてはならない
坂村真民
勇気とは何ぞや
危険を省みず?
後先を考えず?
いや、いや、いや
人間の価値は正義感
それを主軸とした思考と行動が
人を変え、組織を変え、はたまた地域をも変える
激しい雨の日は
あなたの無事を祈りましょう
しとしと雨の日は
あなたの心を思いましょう
冷たい雨の日は
この手の温もりを届けましょう
どんな雨を降らす雲だって
その向こうはいつも青空
そこにあなたの笑顔を見るでしょう
父の「夏」という詩集の中に<原爆>に関するのが一つある。
夏
ひとりの兵士が帰ってきた。
大男の
ちょっと眉をしかめた
愛くるしい童顔の彼は
前の家の近くだった。
「やあ、帰ったかね。早かったね。
どこにいたの」
「広島です」
「ふーん、あそこはえらい爆弾が落ちたというのに
いい調子だったね」
「はい」
つい、二、三日前の新聞で「新型爆弾か」という
記事を見たばかりだったから
私は心から祝福した。
愛くるしい童顔の彼が
あまり見えないので
どうしたやら
ちょっと聞いてみた。
だれかが言った。
帰った当初一週間ほどは
何ともなかった。
やがて血を吐き出した。
血を下した。
帰ってから
十日ほどで
ちょっと眉をしかめた
愛くるしい童顔の大男は
消えてしまった。
19の夏、僕は原爆ドームの川向いのアパートの一室にいた。
食べる物もなく、水だけを飲んで凌いでいた。
放浪の出発点であったのだが、お腹と背中がくっつくのを実感した。
人間はみんな死刑囚で
人生という名の牢獄に繋がれている
毎日、看守がコツコツと
とびらをノックして
ひとりずつ刑場へ連れ出していく
われわれはただ
自分の順番を知らないだけなのだ
(仏 詩)
時代の流れを肌で感じよう
良くも悪くも・・・
僕一個の抗いなんて蟻さんにも劣る
彼らはひたすら荷を運ぶ
せっせせっせと・・・
突然の雷雨が隊列を崩す
しかし半時間もすれば
彼らは元の姿に戻っている
それなりの被害もあっただろうに・・・
人生の下山途中で
風雨を避けて岩陰に身を丸めている自分がいる
水は有る
雨が上がって歩き出す気力があるだろうか
体力は思っている以上に消耗している
余力のある人たちが僕を負い越していく
僕は後退りして岩陰に横たわる
複雑な睡魔に襲われる
あまり経験しない誘いを感じる
父が何かを叫んでいる
紙に殴り書きをして僕に差し出そうとしている
しかし僕にはその字は判別できない
もう一山登れとでも言うのだろうか
母が無言で微笑んでいる
父とは反対に「こっちへおいで」とでも言うように
兄姉たちは戸惑いの顔をしている
そりゃそうだろう無理もない
最後は己の決断だ
両頬を叩くか・・・抓るか・・・
マッチ棒を擦ってみようか
昔雪山でやった最後の足掻きのように