人は日常に追いまくられ
昨日の夢も忘れ
明日の光も見出せない
美しすぎた想い出も
懐かしいあの景色も
灰色の渦が消し去ってしまう
二人で並び見た あの景色は
もう遠い霞の向こう
思い出の片鱗すら見つけられない
二人が交わした言葉さえ
心の中には蘇らない
「さよなら」も言わずに消えて行く
その長い空白の中に、何を想えと言うのだろう
想像できる答えを三つ
心の白紙に書いてみた
それらの上に三本の直線を引き
可能な限りの横線を引きあみだくじを形成した
僕は当然の如く三番を選んだ
鉛筆が曲がり下りるにつれて
その速度は緩まって行った
そして・・・僕は・・・
その作業を停止してしまった
その三つの答え以外のような気がしたのだ
それはおそろしく不気味でもあり
とんでもなく歓喜的でもあるようにも思えた
公園や広い中央分離帯の銀杏並木は
散髪されることはない
わが季節到来!とそびえ立つ
悲しく切り落とされるのは
歩道に植わる彼たち、彼女たち
この寒風では風邪ひくぞ
もうしばらく居させてあげなさい
物悲しい歌でも口ずさめるように
♪銀杏並木の・・・
♪ふたりで歩いたあの坂道も・・・
冷たい雨がアスファルト道に地図を画く
テレパシー
第六感
阿吽の呼吸
そこに比重を置いて生きて来た
他人様のような直接表現は苦手でござる
しかし・・・
大半は一方通行でござった
かなしみ
あの青い空の波の音が聞えるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまったらしい
透明な過去の駅で
遺失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった
谷川俊太郎
振り向けば寂しい
君の住むふるさと
若い日の涙は
明日への涙か
暗闇の彼方に
口笛が流れる
この道はいつの日にか
希望につながる
東の空に陽が昇るまで
とてもとても遠い旅路さ
暗闇の彼方に
口笛が流れる
この道はいつの日にか
希望につながる
宝石箱に入れたままの
想い出たち
もう指や首を飾ることなく
ただ想い出色に錆びていく
ふっと息を吹きかけて
そっと優しく撫でてみる
くすんだ錆の隙間から
あなたの笑顔が蘇る
あの笑い声も あの温もりも
僕は駆け出したい
僕は叫びたい
僕は飛び込みたい
想い出という虹色の空間