どんよりとした曇り空の下
二羽のカラスが
テレビアンテナの上と電柱の天辺で
羽を休めている
何を考えているのか
獲物でも物色しているのか
もう半時間近く動こうとはしない
雨が落ちてきた
鳥の羽は防水だよな
それにしてもまったく動く気配はない
彼らの向こうの山が灰色と化し
稜線がぼやけてきた
雨音が聞こえるほどに
強く振り出してきた
彼らは?と思ったとき
一羽が飛んだ
誘われるようにもう一羽も
近くの造園屋さんの茂みの中へ消えて行った
それにしても
僕は何をしている?
雨音が疑問符の連続に聞こえてくる
もう・・・
山並は見えなくなってしまった
否応なしに引き裂かれるような、つまり受動的な別離ほどショックなものはないだろ
う。薄ぼんやりとした記憶の中の母との別離が、まさしくそれだったわけだが・・・
その後の僕ときたら、能動的に自らの意志で、言ってみれば軽々しく別れを決行して
見せ続けた。相手の、あるいは相手側の、迷惑や混乱や戸惑いを省みることなく。
表面上、受動的立場にあった時ですら、勇ましさを装って悪役側に回って見せた。
自分を虐めることが自分を成長させる〜というような身勝手な論理によって、人様
を傷つけていってしまったのだ。
「どうしてそんなに苦しい方へ苦しい方へ、あなたは行くの?」
彼女の叫びは悲痛だった。その背景にある優しさはまぶしい限りのものだった。
あのまま飛び込んでいたら、どんな人生の展開がまっていたのだろうか?
同時に二つの道は歩めない。