地下鉄を降り 階段を駆け上る
とは行かず……
手摺を頼りに 歩を運ぶ
雑踏のなかの 孤独
信号の青の点滅
走り渡ろう
とは行かず……
次の切り替わりを 待つ
宴会の中の ふとした孤独
楽しげな会話が 僕を
素通りして行く
若い世代の 屈託のない笑顔
未来の希望にあふれた会話
通路の壁の 有名人の色紙
都心を離れての 二次会
何かしら うら寂しさが漂う
自分の世界に入った 女の歌声
往年の声が出ない 惨めさ
ここでも現実を突き付けられる
昔は良かった……
もうひとりの自分が 淋しく呟く
三軒目の女将は
もう店を締めようとしていた
他の客は誰もいない
ここでも突き付けられる 現実
昔は良かった……
女将も 僕も 友も
遠い過去に 己を運ぶ
だんだんと 現実が比重を増していく
それにしても この物価高はなんだ
わずかな距離のタクシー代に
酔いが醒めていく気がする
夏の夜の 数時間の彷徨
頼りない足取りと同じく
我が心も 彷徨い 眠る
