二重スパイ
話は前後するが、結果として僕は、二重スパイ的存在になってしまったと言える。スパイは言い過ぎにしても、両陣営(?)と均等に接点を持ちうる唯一の存在となってしまった・・・というわけだ。
人間の心理とは、実に興味深いものだ。事の真っただ中にいる本人たちですら、僕の客観的視点や考え方に左右されてしまうわけだから・・・。方や〜恨み、妬み、嫌悪・・・、方や〜略奪、征服、独り占め・・・。
しかし、事は意外にあっさりと終焉に向かうこととなる。ほぼ同じころに、両方共が妊娠したわけである。
なにやってんだ!?
独 立
SMAPとはとんでもなく次元の違う話だが、僕にも独立劇はあったわけで・・・
社員を代表しての会社側との交渉は、何とも情けない「ワシが給料払っとるんゃ!」の社長の暴言で the end となり、僕は退職を決意した。同調してくれていた仲間五人の送別会もやり、僕は律儀にも三か月前に退職を願い出したわけだが、その三か月がなんとも滑稽極まりないものとなってしまった。
当時は営業に従事していた僕に、言い渡されたことは・・・�|甘�得意先への挨拶は行かなくてもよい(替わりの者が担当する) ��電話も出なくてよい・・・で僕は出社してもただ席に座っているだけの、軟禁状態のようになった。
ひたすら僕は読書に明け暮れる会社生活が始まったわけだ。そんな折、ある日の朝とんでもない事態が発生した。事務員が僕のところに来て「お客様です。ちょっと怖そうな人なんです。喫茶店で待ってるからって・・・」
誰なんだろうと不審に思いながら行ってみると、その男から金文字の名刺を差し出された。これで僕は納得した。「分かってるやろうな」彼は上目づかいにそう言った。「連帯保証人、上の二人は逃げておらん・・・あんたが最後や」この会社への紹介者の女社長の仕事が行き詰まり夜逃げしてしまったわけだ。
世間知らずと言うよりも、様々な事情の中で押してしまったハンコであったが、まさかこんな日が来るとは思いもしなかった。僕は「分かりました。明日もう一度此処へ来てもらえますか」相手は一瞬「えっ・・・」という言葉にならない声を発して「あ、あ〜」と言って帰って行った。
会社に引き返し、僕は社長に詳細は言わずに退職金の前借を願い出た。(当然、社長は知っていたわけだが、僕がそこまで絡んでいるとは思わなかったのだろう)
翌日、喫茶店でお金の入った封筒を差し出すと、彼は札の束を確認した。そして「おまえ、ええやっちゃなあ・・・これ・・・」と言って、札束の中から数枚の一万円札を抜き取り僕に差し出した。「ほなな・・・」彼は勝ち誇ったように出て行った。喫茶店のママが訝しげに僕を見ていた。
帰社すると・・・
どれほど謗られようが、悪く思われようが、やり場のなくなった悲しみをぶつけてしまった若い女からの改まった誘いを完全に無視しようとして、できなくなり、謝罪のメールをよこしたのだろう、と思った。それが後藤信彦の愚かなまでの誠実さだった。
ニセアカシアの濡れた木陰に佇んだまま、知沙はその場で返信を打った。
『お返事がなかったので、お忙しいのだろうと思い、今夜、私もあの店には行きませんでした。勝手に決めて約束してしまったりして、こちらこそ申し訳ありません。後藤さんの悲しみが癒え、お元気になられることを心からお祈りしています』
メールの送信ボタンを押した直後、ニセアカシアの葉先にたまった水滴がぽとりと知沙の額に落ち、流れ、涙のように頬を伝った。
「存在の美しい哀しみ」 小池真理子

酷似した・・・
ある日のこと、社長夫人に声をかけられた。もちろん他の社員には分からないようにだが・・・。夜にというわけにもいかないので、勤務中だけど一時間だけ何とかなりそうなので、会社からはちょっと離れた喫茶店で会うことにした。
そのころにはもう僕への疑いの目はなくなっていて、むしろ好意的に受け止められていた。それに探りを入れるというようなものでもなく、奥さんなりの悩みの吐露と受け止めた。「こんなこと誰にも言えるわけじゃないのでね・・・嫌な事聞かせてごめんなさいね・・・」
僕はひたすら聞き役に徹した。23歳の人間にしては、僕には凝縮されたような強烈な体験が刻み込まれていたから、こんな話もすっと受け入れられる何かが僕の中には存在していたようだ。
意見とか忠告とか、そんなものは必要ない。そう思って僕は真剣に奥さんの話を聞いた。心の中では(こんなイイひとを悲しませちゃいけないなぁ・・・)と呟いていた。
「なんか・・・話したら、ちょっと気が楽になったわ。ごめんなさいね、仕事中に・・・」僕は「立場上、どっちがどうというようなことは言えないですけど、事の善悪くらいは分かっているつもりです。僕がこんなこと言うのもなんですが・・・明るく生きてください。きっといい結末がやってきますよ」と言って奥さんと別れた。
ハンドルを握りながら・・・「世の中、教科書通りにかいかないもんだな」とわけの分からない言葉を反芻していた。その年までの僕の教科書と言えるものは、いささか純粋過ぎたものだったのかもしれない。
女性特有の言動に、驚かされ、戸惑い、翻弄される。まるでそんな僕を見て、楽しんでいるかのようにさえ思えてしまう。
「横顔が好き!っちゃね〜」助手席の彼女がそう言う。僕の顔が赤くなる。自分の本当の顔は、自分んでは見られない。鏡に映る自分は、彼女が見る僕ではない。ほとんど準備のできない間に、どんどん彼女との距離が狭まってゆく。
職場での彼女は快活そのものだった。電話の受け答えも事務処理もテキパキとしていて小気味よかった。他の男性社員にも分け隔てなく接していた。でもふたりのとき、その真逆の面を見せられて、僕は戸惑った。超ミニスカートで子供のように無防備だった彼女が、どんどん大人の女性に変化してゆくのを、僕は驚きの眼差しで確認させられた。
彼女は小柄だった。140センチ台ではなかったろうか。同郷の高田みずえ似で涼しい瞳の持ち主だった。彼女の書く字は、躍動するような快活文字だった。左利きを直されて、角々とした字しか書けない僕はちょっと嫌悪した。しかしそんな僕を彼女はむしろ褒めてくれた。「字は性格が現れるんやね〜。」彼女にはどんな風に受け止められていたのだろう。
真実っていうのは、語られないものなんだな。
資本主義、自由主義、民主主義・・・聞こえは良いが
内実は、どうもそうでもないらしい。
地球的規模においてさえ、ごくごく一握りの資本家、政治家たちが
今度はどこで、独裁打倒とか自由奪還の名のもとに戦争をおっぱじめようかという
わけだ。
新技術は当然、次の新技術へと繋がるわけだから際限がない。
古い爆弾をどこで使ってしまおうか。
新しい兵器をどこで試そうか。
これでは、地球を舞台にした戦争ゲームだな。
イノベーションがちっとも人間にやすらぎをもたらさない。
カダフィやフセインやムバラクの時代の方が良かった〜になる。
もっとスローに行こうよ・・・てならないのかな。
僕の極端論〜「鎖国しよう!」
「百姓しよう!」
「自給自足で行こう!」
「だめなら、土の肥しになろうぜ」
