「笑顔良しのあきちゃん」いつでも誰からもそう言われた
確かに目が二本の線になるほど、いつも笑っていた
でも、誰一人としてその心の奥にある涙は知らなかった
いやむしろその涙を見せまいとするための作り笑顔だったのだろう
表面上の慰めや思いやりがたまらなく嫌だった
ちょっと大きくなって、幾分おませになったころ
そんな思いやりを嬉しく思うようになった
一種の翳りみたいなものが、異性の心を掴んだ
その翳りの源を突き止めたかったのか
単なる異性感情だったのか
とにかく僕は異性の優しさに包まれて幸せだった
でも、心の奥底では例のピエロ性は燻り続けていた
母性愛とはそれほどまでに比較し難い深さと重さを秘めていた
年齢にそぐわない幼児性が、心のバランスを奪った
それが逆に相手を燃えさせもし、驚かせることにもなった
恋愛感情と母性的感情のごっちゃまぜのようななかで
僕の青春時代の前半は過ぎて行った
分岐点は何だったんだろう、何時だったんだろう
能動的、受動的・・・その両方の別離が
僕を本物の男としての自立へのきっかけとなった

濃厚過ぎた15歳から25歳までの10年間
その中に僕のすべてが詰まっている
後は付録か?
僕は人生の付録を生きているのだろうか?
脱出、別離、脱出、別離・・・その繰り返し
自分の意志だけとは思えない不思議な力が作用している
彼女の言った「どうして苦しい方へ、苦しい方へ行くの?」は
僕にとっては必然だったんだ
選んだのではなく、課せられた道
そう思えてならない
僕を打ち負かしたと思っている奴は、悲しい道化師だ
僕を助けたと思っている人たちは、見事なまでの脇役だ
それらの上に君臨しようとは思わない
むしろ逆だ
僕は、まだまだ・・・
這いつくばって、這いつくばって・・・生きて行く
遠くに幽かに見えかけてきたトンネルの出口を
この目でしっかりと確認するまで

本土から遠く離れた小島の磯辺
小舟の縁に腰掛けて
満天の星空を見上げた
言葉を失うくらい・・・
壮大な宇宙の絵巻物に圧倒された
手を握り
肩を寄せ合い
そのまま星空に吸い込まれるような・・・
あのころが幸せの絶頂だったのかな
悲しい別離なんて
これっぽっちも思わなかった
不甲斐ない、決断力のない、意気地なしの僕
明るく軽やかに、グイグイと引っ張る君
あのまま付いて行けばよかったのかな・・・
「どうして、そんなに苦しい方へ苦しい方へ行くの?」
明確に答えるだけの根拠が見出せなかった
ただ・・・
ただ・・・
男としての変なプライドみたいなものが
目の前の温もりを、優しさを遠ざけて行った

オンラインでのつながりは「会う」こととは違う。
どんなにテクノロジーが発達しても、いまだに人を幸福にするのは
「会う」よろこびなのである。
(Mikako Brady)