「笑顔良しのあきちゃん」いつでも誰からもそう言われた
確かに目が二本の線になるほど、いつも笑っていた
でも、誰一人としてその心の奥にある涙は知らなかった
いやむしろその涙を見せまいとするための作り笑顔だったのだろう
表面上の慰めや思いやりがたまらなく嫌だった
ちょっと大きくなって、幾分おませになったころ
そんな思いやりを嬉しく思うようになった
一種の翳りみたいなものが、異性の心を掴んだ
その翳りの源を突き止めたかったのか
単なる異性感情だったのか
とにかく僕は異性の優しさに包まれて幸せだった
でも、心の奥底では例のピエロ性は燻り続けていた
母性愛とはそれほどまでに比較し難い深さと重さを秘めていた
年齢にそぐわない幼児性が、心のバランスを奪った
それが逆に相手を燃えさせもし、驚かせることにもなった
恋愛感情と母性的感情のごっちゃまぜのようななかで
僕の青春時代の前半は過ぎて行った
分岐点は何だったんだろう、何時だったんだろう
能動的、受動的・・・その両方の別離が
僕を本物の男としての自立へのきっかけとなった