その時初めて、私は自分でも説明のつかない、何か不可思議な心の粟立ちを感じた。
それはかすかな、それとはわからないほどかすかな嫉妬であり、悲しみであり、
空しさだった。慣れているはずの感情には違いなかった。私はいつも、人生に生じる
幾多のささやかなドラマの中心人物にはなれない人間だった。よくても端役、悪ければ
黒子にすぎず、ドラマは私がいてもいなくても、滞りなく進んで終焉を迎えた。
「欲望」【小池真理子】
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まるで自分のことを言い当てられているような文章に出くわす。
芝居で言えば端役や黒子でも、僕にとっては、そこが居心地が良かったのだ。
歌で言えば、バックコーラス。旋律で言えばアルト…そんな感じ。
居直り的に考える時がある。主役も脇役あっての主役なのだ。
一人芝居でもないかぎり…。