○いい年をした男が、餓鬼のころからの淡い思いを未だに引きずっているというのは
恥ずべきことに違いありません。
○くだらない美意識を後生大事に持ち歩いて、すべてを自分が定めた様式の中に
おしこめようとして…
○二十代の初めのころからだろうか、私は自分が長い旅をしていると思うことが
よくあった。帰る場所のない旅、行き着く先の想像もつかない旅である。
「欲望」小池真理子
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一小説の中の何気ない一文であるが、自分のことを言い当てられているようで、
傍らのメモ帳に書き記した。自分だけではないんだという安心感と同時に、
言い当てられてしまった気恥ずかしさと…
しかし、小説の構成上欠かせない韻文であることは理解出来る。
こういう男はたしかに存在するのだ。生い立ちやのその後の性的行動も含めて…。
まるで自分がこの小説の題材になったかのような錯覚に陥る。