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背景の記憶(285)

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六帖一間の安アパートで

寝袋に包まって眠った

懐かしい友の顔が虚ろな心の中を占領した

夫々の思い出が温もりとなり

僕はやがて深い眠りに落ちて行った

posted by わたなべあきお | - | -

背景の記憶(284)

     職員室 2


みんなが何か被っている
水のように物がいえない

だれかがその圧苦しさを越えようとする
甚だしく卑屈に歪んだ語感がある

それをきっかけに
必然性のない観念論が同乗していく

なにかなじまぬもの
清れつでないもの

消化不良の内臓がかきむしる
混濁血液の錯流だ

不協和音は素通りしていきなさい
私の頭はますますひっこまる


           渡部 一夫

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背景の記憶(283)

      職員室

すべての個人的なものが否定される
・・・なんという冷たさだ

どんなに自分だけの真実があろうと
職員室の壁は開いてはくれない

言葉を取り繕おうとするよりかは
出来るだけおし黙っていた方が
かしこいんだよ

真からそれを案じてくれる情(こころ)のないことは
分かりきっているんだから
無理におつきあいで吐き出す言葉だって
みんな自分の身に弁解の蜘蛛の巣を
ぐるぐる巻くことでしかないんだから
苦労話なんかには
職員室の天井は高すぎるんだよ

いやその苦労話にしたって
ほんとに訴えなきゃならぬ根拠があるかないかさえ
あやしく
煙のように薄れていってしまうんだから

だが
この圧迫するもの


この表べだけを「同情」につくって
圧迫してくるものを
どこかで
がっちりと
握る手はないものであろうか

とにかく
そこは
冷徹きわまりなき情(こころ)の刑場(しおきば)

                (渡部 一夫)

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背景の記憶(282)

君は無理にきつい言葉を使って

二人の間にラインを引いた

自らに言い聞かせるように・・・

そのラインは何重にも重なって

太く深い溝を形成した

飛び越えられないくらい・・・

飛び込んでも泳げないくらい・・・

温かい泪の河に溺れようかとも思った

それを遮る君の瞳の威圧に

僕は現実に押し返された

それほどまでの思惑だったとは分からなかった

恨ませて・・・憎ませて・・・

そこまでさえも計算の上だったとは・・・ね

僕よりはるか先を走って

ぐるぐると引きずり回して

息切れするこらい探し回らせて

とんでもないご褒美を用意して

驚く僕を笑って覗き込んで

すっと消えてしまった

何なんだよ

君って人は?59553_560.jpg

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背景の記憶(281)

「横顔が好きっちゃね〜!」
助手席の彼女がいきなりそう呟いた。
「えっ!?」
まさか・・・僕のこと?
とてもじゃないが顔に自信があるわけでもなく
からかわれているんだと思った。
でも、よく見るとそうでもない表情の彼女だったので
僕は照れ隠しもあって、車を発進させた。

彼女はまだ二十歳前、だけど職場では先輩であるわけで・・・
同じ課だったから、いろいろとアドバイスを受ける関係だった。
僕は自分で言うのも変だけど<波乱万丈>の少年時代、青春時代を
過ごしてきたわけで、一種の人間不信、女性不信に陥っていて
職種も人との言葉的関わりの少ない技術的な外現場仕事を望んで入社した。

 仕事を終えて帰社したら日報を提出して「お先に失礼します」の毎日。
事務の彼女は、営業の社員に多く入る電話注文や事務連絡を快活にこなす
明るいマスコット的存在だった。当時はミニスカート全盛で、彼女もその
流行に後れることなく超ミニのスカートを穿いていた。言葉は古いが
トランジスタ的娘だったので、小学生のような振る舞いの時※※チラも
度々だった。

 ある日のこと、僕の机の上にメモが貼り付けてあった。一枚目は業務連絡。
二枚目に「ちょっと相談に乗ってください」と言うのがあった。日報を渡す
時に、「OK」のメモを返した。このころには仕事にも慣れて、僕の人見知り
も随分改善されていたので、躊躇する材料は何もなかった。

 会社からちょっと離れたところで彼女が車に乗り込んできた。さらにちょっと車を走らせた公園横に停車して「どうしたの?」と聴くと、「引っ越ししたいから手伝って欲しいの」彼女は寮で暮らしていたから、そろそろ自由になりたいとのことだった。そんなことなら〜というわけで僕は快諾した。そしてその後に発した言葉が「横顔が・・・」だったんだ。

 でも、その時は深く受け止められず、異性への拒絶反応もぬぐい切れてはおらず極力深く考えないようにした。でもそれは彼女の心からすれば超反比例的な想いであったわけで・・・。

 そもそも五歳年上の彼女との別離の経験者が、今度は五歳年下の彼女からの告知的ことばだったからね。即座には受け止められない自分がいた。1524178720.jpg

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背景の記憶(280)

 クラブの帰り道、僕は彼女よりちょっとだけ早く表へ出た。

彼女は自転車、僕は徒歩。最初の曲がり角まではゆっくり歩いて

曲がって彼女の視界から消えた時、音を立てずに走ってマンションの

塀の陰に隠れた。

 すぐに追いつくだろうと思って角を曲がってきた彼女は、僕の姿がない

ので、辺りをキョロキョロしている様子だった。そして即座に猛烈な

勢いで自転車をこぎ始めた。僕の隠れてていた場所も瞬時に通り過ぎて

行ってしまった。

 そのあまりのスピードに、僕はその先の衝突事故とかが心配になって

猛烈にダッシュして彼女を追いかけた。次の大通との十字路で、彼女は

左右を見まわして必死に僕の姿を探している様子だった。

 僕はひとまず安心して、今度は忍び足で彼女に近づいて行った。

その気配に気づいた彼女は、振り向いて・・・心配と安ど感とがごっちゃに

なったような顔で僕を迎えた。そして、僕のイタズラに気が付いたらしく

今度は思いっきり頬を膨らませて「もう、赦さない!」と拗ねた顔をした。

 「ゴメン、ゴメン!」と素直に謝って、二人並んでゆっくりゆっくり

歩き始めた。バス停が近づくころには彼女の機嫌も直っていて、素直に

バイバイすることができた。バスの中で、彼女のあの必死さというか

まっすぐさが嬉しくて、ひとりにやけている僕だった。

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背景の記憶(279)

異性の心を惹きつける・・・ひとつのテクニックを意識した時

ものすごい自己嫌悪に陥った。

そんな自分が堪らなく嫌になった。

人恋しげな・・・物思いに耽るような・・・

そんな演技的なことをする自分が情けなかった。

誰かに指摘されたり咎められたりしたわけでもなく

僕の中のもう一人の自分が裁定を下した。

一種の「人間失格だ」と。

しかし・・・これは本当に堪えた。

いわば自己改革〜そんなに簡単に行くわけがない。

正味、三年を要した。

青春時代の三年は長く・・・キツイ。

でも、それを克服しなければ、本物の自分=男にはなれなかった。

誘惑に負けそうなときもあった。

だって・・・あの手を使えば、簡単に手中に収めることができたのだから。

でも、僕は耐えた。徹底的に耐えたさ。

受け身から能動へというような大転換は無理としても

少なくとも、その中間的といえるのかどうかはわからないけど

自然体、さりげなさ、ありのまま・・・そんな自分を確立できたように思う。

それでも時々、昔のイカサマ野郎が出しゃばり出ることもあるけれど

そいつに鉄拳をくらわすもう一人の自分は逞しく確立している。

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背景の記憶(278)

♪夕やけの赤い色は想い出の色

 涙でゆれていた想い出の色

 ふるさとのあの人の

 あの人のうるんでいた瞳にうつる

 夕やけの赤い色は想い出の色

 想い出の色 想い出の色

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背景の記憶(277)

 『ねぇ、あきおくん・・・』(三つも年下のくせに彼女は僕をそう呼んだ)

「なに?」 『胸・・・痛くなったことある?』   「えっ、痛いのか?」

彼女は同じ放送部(アナウンサー)の後輩だった。宍道湖の防波堤に二人並んで腰

かけて、夕日を眺めている時だった。(ちょっと話がある)と言われてきたのだ

が・・・。致命的なくらい鈍感な僕は、彼女に促されるままに、僕の頭を彼女の大

腿部にのせて沈みかけの夕日を見ていた。彼女は僕のイガグリ頭を撫でながらちょ

っと軽くため息をついた。彼女の甘い香りと胸の鼓動が伝わってきて、微妙な息苦

しさを覚えた。その時、急に彼女は「帰ろっ!」と言って僕を起こし、スッと立ち

上がると、ヒラリとスカートを翻して地面に降りた。そして僕の手を引っ張るよう

にちょっと大股で歩き出した。このころになってやっと僕の鈍感頭はちっちゃな到

達点を見つけていた。それでもそれを言葉に出せず、握られた手をギュッと握り返

すのがやっとだった。無題.png

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背景の記憶(276)

 高校二年の夏休みが終わったとき、僕は担任のS先生に呼び出された。「こないだ親父さんと話したんだけど(そうなんや、知らなかった)おまえどうするつもりなんだ?三年生になったら、希望進路ごとのクラス編成(能力別)になるのは知ってるよな?おまえはどういうわけか入学試験の成績が高くて(失礼な!)、今のところ男子のトップ50に引っかかっている。そのクラスに付いていけるのか?」

 親父がどんな説明をしたのか不明だったけど、当時すでに家を出て、ある宗教施設に入り込んでいた僕には、選択肢もくそもなかった。そもそも父が入信した宗教だったのだけれど、家庭環境の激変と勧誘(誘惑)が重なって、多感な少年は急激にそちらへと傾斜して行ったのだった。当然ながら予習復習などできるわけもなく、連日ガリ版切とか謄写版印刷とかの日々が続いていたのだ。

 「就職します」の返答に「この学校にはそんなコースはない!」S先生の罵声が職員室に響き渡った。ほかの先生たちがビックリしてこちらを振り向いた。国公立、有名私立、一般私立と言ったランク付けは想像していたが、ホントに進学の意志の失せていた僕は「じゃあ・・・私立文科系でお願いします。」と答えた。しばらく考え込んでいたS先生は「そのクラスで耐えられるのか?」と言って、僕の顔を覗き込んだ。 この時点で、僕を自分と同じ教職に就かせよういう父の願望は消えた。

 S先生の予言どうり、三年生一学期の始め、僕を待ち受けていた教室の空気は重かった。「なんでアイツが???」そんな無言の圧力が僕に重くのしかかってきた。唯一の救いは、小学校の時のあの彼女が〃クラスにいたこと。(もちろん接点など生まれなかったけど・・・。)自分さえこの空気に堪えれば、それはそれで気楽な雰囲気と思えなくもなかった。そして何よりの救いは、新しい担任となったK先生の存在だった。31.4.12-2.jpg

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