背景の記憶(325)

      嫉妬

遠隔地での交通事故で、昏睡状態だった僕に速達の手紙が届いた。

眼を覚ますと、ずっと付き添ってくれていたらしい貴女は、

「お手紙よ」と差し出した。

「開けてあげましょうね」

「あら、写真よ・・・キレイな人ね・・・」

「とっても心配してくれてるのね・・・」

しばらくの沈黙の後

「この幸せ者!」

貴女は僕のおでこを人差し指で突っついた

24.7.4-3.jpg


あの時の写真が一枚もない。
あの時のどころか・・・
あなたの写真が一枚もない。
ブロークンハートを象徴するように・・・

     お産のため帰省していて
     僕を看病してくれたあなたは
     その後数年間、横須賀から
     偽名で手紙をくれた
     あの時の優しい看病の心のままで
     

posted by わたなべあきお | comments (0) | trackbacks (0)

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