懐かしいのは
きみの吹くハーモニカ
あざやかな半音の切り返しに
クシコスの郵便馬車は飛ぶように走り去る
想い出の歌は
合唱コンクールの課題曲
なぜか先輩たちの年の「花のまわりで」が好きで
アルト担当部分の「♪まわ〜る」をいつも口ずさんでいた
小気味よかったのは
バスケ部のきみのパスまわし
ブラインドもバウンドもオーバーヘッドも
意のままにゲームをつくるきみが眩しかった
清々しかったのは
牧場の柵にもたれていたきみの横顔
長い黒髪をそよ風に透かせて遠くを見ていた
声をかけるのも躊躇われて僕はしばし見とれていた
頼もしかったのは
きみのドライブテクニック
サファリスタイルの車が似合っていた
「ナナハンにも」の話には想像するだけでもかっこよかった
羨ましかったのは
きみの書く流れるような文字
左利きを直された僕の角々文字とは真逆すぎて
もらう手紙は嬉しかったけど、出すのはほんとに恥ずかしかった
驚かされたのは
突然後ろから差しかけられた赤い傘
僕は濡れながら腰を屈めてとぼとぼと歩いていた
バス停で手渡された時、恥ずかしさと嬉しさでずっと握りしめていた

僕の書いたシナリオを
何ページも飛ばして
きみは目の前にいた
そして・・・
分厚い冊子を一気に閉じてしまった
驚く僕を
きみは笑いながら見ていた
「省略、省略!」
僕には意味不明の言葉が
エコーのように響いて
頭の中を占領した
手順も階段も必要ないほど
二人の心の距離は近すぎて
大人のフリをする僕の心を
きみはあっさりと裸にしてしまった
そのスピードに戸惑って
その大胆さに驚いて・・・
それをまた面白がるきみがいて
僕はまったくお手上げさ

さびしくなんか
あなたは そこにいて ここにはいない
でも・・・
あなたは わたしの こころのなかに
そっと やさしく いてくれる
だから・・・
わたしは さびしくなんかない
もう・・・