夕暮れ時、いつもの公園で
きみは待っている
バスを降りてからの小路を
僕は速足で歩く
角が二つあるので
公園からは直接確認できない
時々、僕はいたずらをする
直前の角の手前で木陰に身を隠す
時間厳守のきみは、約束の時間が五分も過ぎれば
心配げに僕を探しに歩き出す
きみが行き過ぎた後
僕は忍び足で公園に行き、ブランコに揺れる
きみが帰ってくる
「えっ!」きみが目を丸くする
事情を察知したきみが
拗ねたふりをして先に歩き出す
僕が追い越して振り向きながらゴメンナサイをする
ふたり
黙って手を握り合って歩き出す
僕は軍隊の行進のように
大きく腕を振り上げる
きみはわざと歩幅をずらして
さっきの仕返しを試みる
そんな・・・ふたり

馬が一頭いた。
牛も二頭いた。
鶏は記憶がない・・・生まれ故郷〜隠岐の島の家のことだ。
小さな手漕ぎ舟があった。
網や銛や釣り道具もたくさんあった。
晩のおかずの魚釣りや貝採りは子供たちの役目だった。
今や高級品のアワビやサザエもすぐ近くの岩場でふんだんに採れた。
家の横の畑では、野菜が栽培されていた。
ちょっと裏山へ足を延ばせば、柿・みかん・あけび・栗などの木があった。
半農半漁の生活・・・給自足的生き方とは、こういうものだと今つくづく思う。
冬の夜は、ランプの下で干したスルメイカの背中を伸ばして束にするのが
子供たちの役目だった。
囲炉裏は暖かく、団らんの場としては最高だと今でも思う。
風呂焚きも子供の役だった。
山水の溜め場から水を運び、まき割もした。
新聞紙から始まり、松葉から木の枝へと火を熾していった。
五右衛門風呂が懐かしい。
底板を踏む技術が思い浮かぶ。
母屋から離れたところに便所があった。
夜遅くに行くときは、本当に怖い思いをしたものだ。
懐中電灯が超貴重品だった。
今も忘れられない光景がある。
高台にあった家から入り江がきっちりと見下ろせた。
ボォ〜という汽笛を響かせて定期船が入ってくるのが見えた。
絵葉書に最適と思われるような素晴らしいアングルだった。

緑の野原にきみを見る
薄紫の山並みにあなたを想う
はるか遠い水平線に亡き人たちの声を聴く
故郷は僕を待ってくれているでしょうか
母の想い出のないあの地は
故郷と言えるでしょうか
目を瞑りましょう
夕日を背に菜を摘む母が見える
腰を伸ばし額の汗を拭う母が見える
坂道で両手を広げて僕を抱き寄せる母が見える
死の淵を彷徨う僕を必死に看護する母が見える
僕はあなたに何をしてあげたのでしょう
存するだけで良かったのでしょうか
さよならも言えずただ泣いてばかりいた僕
ただただ想うこと
その想いを届けること
あの時とは逆に
僕があなたを抱きしめてあげましょう
