まだ僕は成人前だったかな?
広島にいたころ、夜逃げを手伝ったことがある。
とても勝ち気な奥さんと、気弱そうだが男前の旦那、そして小学生の男の子。
「晩御飯でも食べていく?」と言われたが、いつもと雰囲気が違う。
それにご飯と言われたがそれらしきものはなく、インスタントラーメンだった。
訝しがる僕に奥さんが切り出した。
「実はね・・・」
詳しい内容は言われなかったが、その夜のうちに家を出ると言われた。
そして「できれば手伝ってほしい」と。
僕はトラックに梱包なしの、家財道具を積めるだけ積んで、運転をした。
小一時間くらい離れた場所だっただろうか・・・。
その夜、電気コタツに足を突っ込んで、四人で寝た記憶がある。
あの家族はどうしているのだろうか?
気丈な奥さんの目に光るものがあったのを、今でも覚えている。

まるで子供の飛び出しのように
きみは前しか見ないで
自転車をこいだ
僕はちょっとしたいたずら心で
家の陰に隠れていたのだが
あまりのスピードに
その先の出来事が怖くなって
後ろから声をかけてしまった
急ブレーキをかけた君は
照れたような怖いような
複雑な表情で僕を睨んだ
二十歳のエチュード
父よさらば
兄よ姉よ弟よさらば
かわいそうな継母よさらば
すべてのよき先生方よさらば
そして我を愛してくれた女たちよさらば
今我は母の心のみを抱いてただひたすら
放浪の旅へとたたん
すべての関係者関係事よ
わが胸の中から去ってくれ、お願いだ
一個の生物体はどこへ行く
暗い夜空の彼方へと流れ星となって
飛んで行け
見えなくなっても飛んで行け
