「あなたは、いつもどこか遠くを見ている。」
そんな意識は欠片もないんだけど、あなたはそう言って寂しそうな顔をした。
あなたの存在が当たり前になっていて、その空気のような存在のかけがえのなさ
が、僕には掴み切れなくて、気が付いたら繋いでいたはずの手は振りほどかれてい
た。今にして思えば、僕の見ていた<遠く>とは、<亡き母>であって、でもそれ
はあなたにしてみれば、他の女性と映ったのかもしれない。そしてそれはあなたに
とっては、確かに自分以外の他の誰かであって、自分に僕の心の全部が向けられて
いないと映ったのでしょうね。そんな存在の母にさよならをして、貴女の胸に飛び
混んでいたなら・・・