不気味な静寂が部屋を支配する
外からも音らしい音は聞こえてこない
時折風が隣の洗濯物を揺らすだけ
パソコンで観ているユダヤ人ガス室送りの
映画のせいかもしれない
まるでその時代にタイムスリップしたかのようだ
人間の愚かさはどこから来るんだろう
当事者は自分が後世に裁かれる存在だなんて
思ってもいないだろう
現代も同じようなものだ
明らかな軍服と武器を持たないだけで
やってることは愚か極まりない
市民は無抵抗に追いやられ
運としか言いようのない気まぐれが
人々の生死を分ける
暗闇と無音のなかで
携帯のバイブ音に
現在に引き戻される

批判を受けて
捨て台詞を叩きつけられて
先を見通したかのように断罪されて
それらはすべて
言い返しようのない事実であり
ただ心の奥底に刻み込むしかなく
やっと見つけた
長いトンネルの向こうの薄明かりは
行ってみれば瞬時の幻で
いくつもの迷路の分岐点だった
ひとつを行っては引き返し
次のひとつを試みる
何度でも
何度でも
彼らが立てかけた壁は
頑強にしてそびえ立ち
打ち破ることも
よじ登ることも
できやしない
土の上で大の字になった僕に
大粒の雨が叩きつけ
跳ねた泥が目を潰す
口を開けよう
鼻腔を開こう
耳を研ぎ澄まそう
この繰り返しよ
この連鎖よ
僕は半歩でも前進しているのだろうか