五分、六分の短編映画もいいもんだな
人の心の凝縮されたものが
花の香りのように
密やかに浮き上がってくる
「おめでとう」・・・「ありがとう」
「好き」・・・「大好き」
「じゃあ」・・・「あしたまた」
「あの〜」・・・「ん?」
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僕は、深夜に5〜6分のラジオをやるのが夢だった
手紙を読むように語り
好きな歌を一曲かける
そして・・・
「おやすみなさい」
「また、明晩」
・・・母は四つの僕を残して世を去った。
若く美しい母だったそうです。・・・
母よ
僕は尋ねる
耳の奥に残るあなたの声を
あなたが世に在られた最後の日
幼い僕を呼ばれたであろう最後の声を
三半規管よ
耳の奥に住む巻貝よ
母のいまはのその声を返へせ
堀口大学
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堀口大学は四歳か
僕は三歳
父は無言でこの詩集を
僕に手渡した