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背景の記憶(303)

 経験したことに変わりはないはずなのに、まさにその時の感覚と、半世紀を越えて思い出すのとでは、これほどまでの違いがあるのかと驚かされる。

 当時十八歳の僕からすれば、二十三歳の彼女は、とんでもなくオトナに見えた。年取ったという意味ではなくて、ホントに大人感がいっぱいだったのだ。いま、間近に見るその年齢に達した姪っ子たちを見れば、比べものにならないくらい幼稚に見えて、どうかしたら彼女たちの親でさえ、その存在感からしたら、当時の彼女の方がオトナに思えるくらいだ。

 そんな目で見れば、高校生や中学生である孫たちでさえ、同時期の僕と比べても、はるかに幼く見えるのは、どうしたものだろうか。
 おそらくこれは僕の推測ではあるが、歳を重ねた自分の意識や視点が、若かりし頃の自分と同化して、当時の自分をオトナ化して観ているのに違いない。おそらくは、当時の僕も、ホントは彼等彼女らと一緒で、幼いこと極まりない存在であったに違いない。

 やり直しのきかない人生。一度きりの人生。・・・が、しかし・・・思い出は新たなストーリーを展開して見せる。それが僕の願望なのか、はたまた彼女たちの悲願なのか。鮮やかなまでのストーリーを展開して見せる。
 現実界には存在しない彼女たちでさえ、この現世に蘇り、僕に囁きかける。

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posted by わたなべあきお | comments (0) | trackbacks (0)

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