暗闇の中で
僕は落下を始めた
不思議と恐怖心はなかった
地面なのか海面なのか
それらしき場所が近づいたとき
僕は意識を失った
夢現というやつなのか
どこまでが実で
どこからが夢なのか
混沌とした設定に
僕は戸惑いながら
自分の体と心を確認した
母親の胸に抱かれて見る夢に
猫や狸があらわれて
幼子には鬼や化け物のように
恐ろしかった
しがみつく指先の温もりと柔らかさが
唯一の命綱だった
同じ夢を
どこで見るかで
その衝撃や恐怖は
安楽の境地にも変化する
僕を取り巻く猫や狸は
いつの間にか
ウサギやリスにすりかわっていた
posted by
わたなべあきお | - | -