仕事の現場が近かったので、Yさん宅にご機嫌伺いで行ってみた。
もう来年90歳というおばあちゃんだが、口の方は相変わらず達者で高齢を感じさせない。
昔(30年位前まで)小料理屋を営んでいた人で、ズバズバものを言う明るいお婆ちゃんだ。今もその雰囲気が残っていて話していて楽しく飽きない。
台所のちょっとした不具合を直してあげて、お茶をいただいているとき、昔話が出た。「K大学の総長さんやM製作所の社長さんや・・・えらいさんも結構来てくれてはったんやで〜」
「Yさん、その性格やから・・・みんな安心して息抜きに寄ってたんとちゃう?」
「そうかもなぁ・・・そんな人らにでも<ちょっとこれ、隣に渡してんか>って遣ってたわ(笑)」
なんとなくわかるような気がした。ビジネス絡みで緊張しっぱなしのお偉方が、ふっと安心する母親みたいな空気に寄ってきたんだと思う。
「それにしてもYさん、いい時代にお店やってたねぇ〜」
「ホンマや・・・ええ時代やったわ。今では考えられへんわ」
「Yさん・・・そういう裸の接客をしてきはったから〜若いんやわ」
「そうかなぁ・・・そうかもしれへんなぁ・・・」
Yさんは昔を懐かしむような表情で、また僕にお茶を入れてくれた。