親子だから・・・似ているのかも知れない。
あれは、父が今の僕くらいの年齢のころだったのかな。
父は和室の柱にもたれて、両膝を抱え顔を埋めていた。
何か悩み事でもあったのか、得意の俳句でもひねっていたのか?
久しぶりに寄った我が家(帰った〜とは言えない事情があった)。
僕はなぜかそんな父に声をかけられなかった。
当然の結果ではあったが、我が家に僕の部屋はなかった。
家出息子のご帰還は、歓待を受けるほどのことではないと分かってはいたが・・・。
そっと見上げた玄関の壁に、父の書いた大きな額がかかっていた。
『雨に濡れて 独り 石がゐる』
だれの詩の一節だったろうか?
父の心境のように思えて悲しかった。
母が逝き・・・継母が来て・・・兄姉が家を出て・・・兄が精神を病み・・・
自身が大病を患い・・・僕が・・・
父を主体とした眼からして、それらはどう映ったのだろうか?