地震と津波は多くを奪ったし、もろい原発がそれに輪をかけた。その結果、これまでの生活の方針、社会の原理、産業の目標がすべて変わった。多くの被災者とともに、電気の足りない国で放射能に脅えながら暮らす、つまり、我々は貧しくなるのだ。よき貧しさを構築するのが、これからの課題となる。
これまで我々はあまりに多くを作り買い飽きて捨ててきた。そうしないと経済は回らないと言われてきた。これからは別のモデルを探さなければならない。被災地を見て要所要所に賢者はいると思った。若い人たちもよく働いている。十年後、この国はよい貧しさを実現しているかもしれない。
池澤 夏樹