草原のただ中に 原色を組み合わせた派手な家が立ち並んでいる なぜかドアも窓もなく 中は丸見えだ どの家にも女性が一人居て 民族衣裳を纏って微笑んでいる 僕は何処から来たのだろう なぜこんなところに迷い込んだのだろう 頑丈な骨格の馬はゆっくりと歩を進める 僕の意思を先取りしたかのように 大きな屋敷の前で歩を止めた 雰囲気からしてそれらしきと所と察知した 無言のまま女性は部屋へ導いた 明らかに年配ですへての仕草が手慣れていた 僕も無言のまま窓辺の椅子に腰を落とした さすがに彼女は怪訝な顔をして僕を見つめた 僕の手持ちのリュックには 何故かとてつもない大金が詰め込まれていた 僕は彼女に目で合図をして元締めとの面会をもとめた さぁ何人の女性が居たのだろう 全員が呼び集められた 他の客は一人もいなかった さぁ…というところで映画のフィルム切れのように現実に戻された 夢か…不思議なしかし妙に現実めいた内容だった 一人一人の表情もやけに個性豊かだった まるで僕の出現を予期していたかのように 動きは俊敏そのものだった 僕は悟った…これは過去世の出来事だな…と 明らかに場所はモンゴルか中央アジア 長編の夢物語から醒めたら 現実はまだ早朝の四時過ぎだった 心地よい気だるさの中で 僕は夜明け前の新鮮な空気を吸い込んだ
夏が来れば想い出す。
離島の満天の星空。透き通った海。何度も溺れかけた浜辺。
ぐるぐると回るばかりの櫓漕ぎ舟。笹竹の釣り竿。
タコ糸のような釣り糸。
母親の着付けで女装して参加した盆踊り。
灼熱のテニスコート。
追い掛け回した磯蟹。
あきちゃん〜同名揃いの同級生。
手作りの竹鉄砲。杉の実の鉄砲玉。
かぶりついた小梨。
氷のように冷たい谷水。
蚊帳と蚊取り線香。開けた浴衣。
縁側での夕涼み。西瓜の冷たさ。
墓道の薄暗い怖ろしさ。
糸が切れたままのじいちゃんの三味線。
ばあちゃんの唄う味のある地元民謡。
蝋燭とランプ。
火の無い囲炉裏での食事。
隣国語と混線するラジオ。
・・・・・・・・・・・
夏休みしか帰れなかった小学生、中学生時代。

「○○と煙は高いところを好む」と言うけれど
これまでの人生で、住む家と言えばほとんどが高所と言っていい。
生まれ故郷の島の家は、湾を見下ろす坂道の頂点にあったし、
、
父が建てた家も、街の丘に位置していた。
青春時代のアパートは、京都市街を見下ろす場所だった。
夜、西方に見える京都タワーを中心とした夜景が素敵だった。
結婚して間もなく移り住んだ家も、竹藪を切り開いた高台だ。
真正面に比叡山が見え、朝、昼、晩と変わりゆく景色に飽きることはない。
どの時代の、どの場面でも、この場所位置が無かったなら
おそらくは、とんでもない息苦しさを覚えるだろうと・・・。
時には、ハンドルを握らず、自分の足で地を踏みしめて、
緩やかな坂の感覚を楽しみたい。
