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   静かな雨であれ

   しとしと雨であれ

   そぼふる雨であれ

   叩きつけず

   押し流さず

   草木に染み入るような

   心さえ潤すような

   優しい雨であれ

   慈しみの雨であれ


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posted by わたなべあきお | - | -

夏の夜の夢

地下鉄を降り 階段を駆け上る
とは行かず……
手摺を頼りに 歩を運ぶ

雑踏のなかの 孤独
信号の青の点滅
走り渡ろう
とは行かず……
次の切り替わりを 待つ

宴会の中の ふとした孤独
楽しげな会話が 僕を
素通りして行く

若い世代の 屈託のない笑顔
未来の希望にあふれた会話
通路の壁の 有名人の色紙

都心を離れての 二次会
何かしら うら寂しさが漂う
自分の世界に入った 女の歌声

往年の声が出ない 惨めさ
ここでも現実を突き付けられる
昔は良かった……
もうひとりの自分が 淋しく呟く

三軒目の女将は 
もう店を締めようとしていた
他の客は誰もいない
ここでも突き付けられる 現実

昔は良かった……
女将も 僕も 友も
遠い過去に 己を運ぶ
だんだんと 現実が比重を増していく

それにしても この物価高はなんだ
わずかな距離のタクシー代に
酔いが醒めていく気がする

夏の夜の 数時間の彷徨
頼りない足取りと同じく
我が心も 彷徨い 眠る

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posted by わたなべあきお | - | -

老人青年

辛いとは思わないさ

しんどいとも言わないさ

熊本や千葉や北陸や……

辛い所だらけしゃないか

しんどい所だらけじゃないか

軽々しく口にすべき言葉じゃない

歯を食い縛る

上を向く

おーい!と叫んでみる

♪自分のことは後にする……………

微妙な天の差配に、感謝の念が湧いてくる

なんのこれしき!

両頬をバシッとしばいて、歩を進めよう

誕生日が近いぞ

挫けんなよ!老人青年よ?

この月末~幾つになるんだい?

当年取って七十八歳

十年取って六十八歳

その意気!その意気!

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さよなら

   さよならも力を与えてくれるものだ

私は、これまでの短い半生のなかで、多くの人との別離を経験してきた。
彼ら、彼女たちは、私にサヨナラとはひとことも言わなかった。
それでも歳月は、私に、彼ら彼女たちの笑ったり、歌ったりしているまぶしい姿を、
ふとした時に見せてくれる。
人の出逢いは、逢えば必ず別離を迎える。それが私たちの‘生’である。生きていることがどんなに素晴らしいことかを、さよならが教えてくれることがある。

        【伊集院 静】

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末孫の役目

 父方にしろ母方にしろ、私がその最末孫であることを意識した時、双方の
不遇、災難、困窮問題、特殊な病巣に行き当たり、その解明と解決に
心を傾注しなければならぬとの結論に達したのでした。
 それぞれの代に現出した具体的な事例と、父から譲り受けた家系図を紐解いた時、
不審と言えるある一霊は、系を成す線からぽつんと外れて記されていたのでした。
まるでその一員ではないかのように。役所に届け出されていないのか、あるいは闇から闇へと葬り去られた一霊なのか?明治時代のしかも離島の小さな部落の出来事など知る由もない。
 しかし、小説や映画の「八つ墓村」にも似た数々の同現象が我が家系に代々起こり続けたことは否定出来ない事実として残っている。おそらくは誰ひとり疑念を抱かずに、これまた誰ひとりその解明に着手しなかったことが問題なのだ。
 過去のことは覆せはしない。しかし、これから先に起こることを予防することは可能だ。  
私にできることは、その可哀想な霊の「鎮魂」ということになる。それにしてもなぜこれまで誰ひとりとして、その解決策を講じて来なかったのか?最末孫の私が、諸々の悪現象の食い止め役にならなくてはいけないという結論である。 
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最善策

過ぎるほどに一途なあなたを

息苦しく受け止めてしまったのでしょうか

あなたの伴侶は……

外で見せるその空気は、むしろ心地好く受け止めたのですが……

対極の無視も無関心も辛いものではありますが

こればっかりは、どちらに軍配とは行きません

新聞の人生相談の欄に、似たような悩みを目にします

若者世代の答えは、驚くほどに早い

もちろん次を見つめることもできるから……

あなた世代はそうも行きますまい

僕のお奨めは……

自分の心の中に、もう一部屋をお持ちなさい

それが僕の言える最善策です

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二人の自分

あれだけお父さんを憎んだということは

それだけ、あなたはお父さんが好きだったのでしょう

あれだけお父さんに反発したということは

それだけ、あなたはお父さんに認めて欲しかったのでしょう


授業の合間に教室を抜け出して、グランドを真っ二つに歩いて

校門を出て行くあなたを、僕は教室の窓辺で羨ましく見つめていた


何が原因だったのかを知ったのは

ずいぶんと時を経てからのことでした


僕の異変にも、あなたは感付いていたはずです

同類でしたからね

二人にしか分かりあえない異変の代物

反比例 捻れの位置

授業の文字列が抽象用語に性格を変える


環境は恐ろしく人間の心に入り込み蝕む


あなたも一緒のはずだ

ひとりで二人の自分を生きている


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独り


「一人」ではない 

「独り」だ

孤独に徹する

何かが見えてくる


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産めよ増やせよ

まだ一誕生日も迎えずに、六人の内三人もの幼子を

失った親の気持ちは想像もつきません。

「産めよ 増やせよ」の多産の時代……

と言ってしまえばそれまでのことですが、

様々な事情があるにせよ、それにしても多すぎます。

父の側の十人もの兄弟姉妹と比べた時、

【命の重さ】を考えさせられます。

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断つ

断つ 遮断する

切る 切断する

絶縁 縁切りする

これらは、やられた受け身の側の仕打ちではあるが

この際、自らもやるべきことと思っている

悪意ではなくて、計算でもなくて、

ひとつの【思い切り】として……

そこから生まれてくるものに

【明日】を見たい

【希望】を持ちたい
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