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背景の記憶(300)

 父が学校の教師だったから、当然ながら父自身が僕の授業参観に来ることは全く無かった。そしてこれまた悲しいかな当然ながら義母(継母)も来ることは無かった。しかし、父と僕の担任教師とは学会でも知人であったため、それなりの情報は父には伝わっていたようだ。

 あれは小学四年生の頃だっただろうか?帰宅した父から「あきお、おまえ教科書を学校に置いたままなのか?」と聞かれた。(あちゃ、バレたか・・・)さらに「宿題はどうしてるんや?」これには(放課後の時間にやってしまってるよ)と答えた。事実だったし。それから先は父の追及は無かった。更に聞かれてもたぶん無言を貫いただろう。

 理由は明白だった(自分なりに)。僕にはランドセルが無かったし、当時では気の利いた手提げ袋も無かった。幼心ながら、風呂敷に教材を包んで行くのが恥ずかしかったのだ。似たような子は他にもいただろうけれども、そこまで観察する思いもなかった。着ている服と同様、人の目が気になる性格的なものも働いたようだ。

 もう一つ付け加えれば、級長という立場も、一種の自尊心を形成していた。いつも書くように自身のピエロ性がそうさせたのだと分析する。人前では一際明るく振舞い、(笑顔良しのあきちゃん)を演じていたのだ。そんな内面を、父はどこまで理解していたのだろう?担任の先生からの伝達を鵜呑みに信じていたのだろうか?

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posted by わたなべあきお | comments (0) | trackbacks (0)

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