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背景の記憶(240)

 四人はいつも行動を共にした。僕のつけたあだ名は、スタローンにミックジャガーに猪八戒。風貌からしてこれ以外のあだ名は思いつかなかった。僕は何て呼ばれていたのだろう?あだ名を付けにくいほど、どこにでもいるようなヒッピー被れだった。

 スタローンはほんとにそっくりだった。髪型も顔の堀の深さも体型も。ヘンリーミラーの分厚い本をいつも持ち歩いていた。広島のある新聞社の編集長の息子と言っていたけど、家出の理由は結局話さずじまいだった。ピアノの素養もないのに、バイト先のデパートの従業員休憩室で、いきなり無茶苦茶にたたき鳴らす行動をとったりして驚かせた。即興とも言えない、メロディーもなってない、ひたすら両手を鍵盤に叩き付けていた。「芸術は爆発だ!」岡本太郎を連想した。

 ミックはすべてを真似ていた〜と言うか、なりきっていた。髪型、ファッション、歩き方・・・。バイトを終えたら必ず向かいの二階にある喫茶店に行った。ジュークボックスに小銭をつぎこんで、ストーンズの歌に酔いしれていた。目を瞑り足を鳴らし、自分だけの世界に浸っていた。

 猪八戒は、これほどピッタリのあだ名はないほど酷似していた。ちょっとがに股で、動物のような歩き方をした。唯一自分の家から通っていた。僕と同じ姓だけど、彼は「ワタベ」だった。何がどう違うのか、いつからどうなったのか、姓の由来で長々と議論したこともあった。家の商売の跡を継ぐとか言っていた。袋帯か何かの関係と言っていたような・・・。

 僕は家出息子には違いなかったが、冒険はできない小心者だったと思う。何事にも挑戦はしたが被れることはなかった。ヘアースタイルもファッションも当時の若者と何一つ変わらなかったが、中身とマッチングには?だった。異性にも臆病だし、いつもみんなの後を歩いていた。檻の中から急に解き放たれた小動物のように、世間に怯え、怖々と風の強さと冷たさに、懸命に馴染もうとしていた。

二十歳のエチュード。29.2.14-1.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

巡礼

「苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である」



               『青べか物語』 山本周五郎



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落差

刺激的、魅力的、個性的な人間は

僕みたいな凡人からすれば

ホントに羨ましいくらいに刺激的なのだけれど

当の本人は

その<的さ>加減がわからないわけだから

意外と深く考え込んじゃったりするわけで・・・

でも、その落差や振幅の激しさがまた

新しい魅力を作り出すエネルギーなのかもしれないな

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(ニュージーランドの夜空)

posted by わたなべあきお | - | -

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