みんな必死に意見を戦わせているのだが
僕にはどうでもいいことのように思えて
口がパクパクの無声映画でも見るようで
その内容はちっとも耳には入ってこない。
喋っている人の後ろに、もう一人の彼や彼女を浮き上がらせて
まったく異次元の言動を重ね合わせる。
そっちの方がむしろ僕の興味をそそり、天井までいっぱいの議場と化す。
僕は書記なので、みんなからは正面横に坐しているのだが
その中のひとりだけ、僕を興味深そうに見る視線を感じた。
彼女は上品に脚を組んでいる。目は穏やかに笑っているようなそうでもないような・・・。
おや、見抜かれてるのかな?
ふっと現実に戻されて、僕はもっともらしく机上の書類に目を落とした。