月にかかる松の枝葉のように
快晴の空の一片の雲のように
メインボーカルの横のバックコーラスのように
映画の中の渋い脇役のように
僕は
そんな存在でありたい
あの人も あの人も
素知らぬふりして通りすぎて行く
僕は呼び止めかけた手を引っ込める
忘れられたか
気にもされない存在か
もう数十年前の流行り歌が
僕の心を慰めてくれる
僕はいつも言ってきたよな
自分が思うほど
人は僕のことなんか気にしちゃいない
振り向けば寂しい
君の住むふるさと
この道はいつの日にか
希望につながる
東の空に陽が昇るまで
とても とても
とても遠い旅さ
暗闇の彼方に
口笛が流れる
この道はいつな日にか
希望に繋がる
うだるような暑さの池の葉陰で
低音の蛙の鳴き声が響く
勝手な通訳を試みよう
「おまえは何を考えているんだい?」
僕は答えてやるさ
「君と同じことを考えているのさ」
鳴き止んだ静寂に
己の愚かさを恥じた
「わ~!」とでも叫べば良かった
そのための静寂の方が
スッキリしたはずだ
体験は素晴らしい
想像をはるかに越える
あの満天の星空
あの遥かな水平線
あの静寂の跨線橋の下
独りではこれ程まで鮮やかには甦らない
あなたと僕
若々しさの鮮烈な色香
思い出しておくれ
僕の顔 僕の声
僕はいつも思い出す
あなたの顔 あなたの声
ただ 気がかりが一つ
僕と気づいてくれるかな
あなたを見つけられるかな
もう半世紀も経っちゃったよ
まわりには誰ひとりいなかつたから
きみの名前を呼んでみた
暗闇の彼方で
声は寂しげに木霊した
もう一度そっと呟いてみたら
すぐそばに君の気配を感じた
そっと振り向く僕に
生ぬるい夜風が頬を撫でた
いろんなことがあるさ
いろんなひとに逢うさ
ぼくらの旅は果てしなく続く
知らない街で愛を見て
ふと立ち止まり
和んでみるのもいいさ
旅はまだ続く
炎天下では
あの頃を思い起こそう
帽子も被らず
ひたすら歩き続けたじゃないか
公園の水が命綱だった
木陰が救いだった
アイスキャンディーが宝石のように思えた
19の夏 ヒロシマ
陽炎に僕の未来を重ね見た