二度とない人生だから
無限の愛を
そそいでゆこう
一羽の鳥の声にも
無心の耳を
かたむけてゆこう
二度とない人生だから
一匹のこおろぎでも
ふみころさないように
こころしてゆこう
どんなにか
よろこぶことだろう
二度とない人生だから
一ぺんでも多く
便りをしよう
返事は必ず
書くことにしよう
二度とない人生だから
必ず一番身近な者たちに
できるだけのことをしよう
貧しいけれど
こころ豊かに接してゆこう
二度とない人生だから
つゆくさのつゆにも
めぐりあいの不思議を思い
足をとどめてみつめてゆこう
坂村 真民

さよならも言わないで
去ってしまった あなた
さよならは 永遠の別れとでも言うように
言葉も文字も残さなかった あなた
かすかな希望の欠片さえも残さずに
まるでそうすることが 別れの美学とでも言うように
あの頃のかすかな余韻の場面の中に
希む光を見つけようとしたけれど
僕を拒絶するように 扉は閉じられていった
鍵止めのない扉が 非情の風に
ゆらゆらと悲しい鳴き声をきしませていた
