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不条理の条理

 そして、船を押し包み有無をいわせず周囲に雷光を走らせる雷雲。辺りに立ちこ

める雷の気配を感じて逆立つ髪の毛と、今は何かの予感に狂ってしまい、いずこを

も指さず一人くるくると回りつづけるコンパス。

 そこでは人間は誰だろうと何もかも捨てて、素にならなければならず、ならざる

を得ない。そうなることで誰しもが、人間なんぞこんなものでしかないのだと気づ

き悟らされる。それは人間の原点への回帰ともいえる。一切の感情を伴わぬ、生き

ていながら死を、予感じゃなしにまさに知覚している瞬間だ。いわば不条理の条理

の体得だな。俺は何ほどのものではありはしないという、ある意味じゃ強烈ともい

える放心の中での存在の現実感覚というやつだ。


            石原慎太郎 「男の粋な生き方」〜自然との交わり〜




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男の粋な生き方

富裕とか貧乏とかいうものはあくまでも相対的なもので、しこたま金を持って

いてもガツガツしてる奴はいるし、貧乏していても悠々としている者もいる。

要は人生への気概の問題だが、どちらかといえば貧乏に慣れている奴の方が

生き方では強いな。つまり貧乏の培う耐性の問題だよ。


         男の粋な生き方  「貧乏の魅力」  石原慎太郎


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HOW

『わが身に降りかかった悲痛事に対して、その何ゆえか(WHY)を問わない。

 それよりも如何に(HOW)対処すべきかが大切』


                    森  信三



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負けるが勝ち

これは正式な裁判でも何でもないからね

弁護とか反論とかできないんだけど・・・

誘導尋問には引っかからないことだね

むこうの思う壺だからね

かと言って、心理の問題は

決定的証拠とは言い難いし、難しい問題だ

そもそも・・・

こうして争うことに意味があるのかね?

自分こそ正義の塊りだと思っている人間ほど

扱い難いことはない

情緒とか温もりとかが通用しないからね

平行線どころか捻じれたままさ

僕は・・・

「負けるが勝ち」を推奨するよ

争うだけ無駄

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真理


 『真理は現実の只中にあって書物の中にはない。

  書物は真理への索引(インデックス)ないしは栞(しおり)に過ぎない』




                     森  信三





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あなただけに

僕は

切羽詰まったような

目先に捉われた

現実的な話ではなくて

できるだけ

哲学的に

文学的に

話してみたいのです

そう思うと

話せる人は

どんどん限られてきてしまうのです

もし逆であれば

自分が思ってもいない方向へ

流されて行くような気がしてならないのです

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それでいいのだ

電話にしろメールにしろ

かなりの期間、コンタクトのとれない僕を

つまらないヤツととられるか

礼儀知らずととられるか

それは覚悟の上で

僕は発信を我慢しているのです

なんと言えばいいのだろう

中途半端な命乞いは

僕のポリシーではないんだな

最後の最後の最後で

そうだったのか・・・と

理解してもらえれば

それでいいのです

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二重生活

きみは悪くない。
精一杯正直に生きてきたさ。
親の意向に従ったことも、きみの環境なら仕方のないことさ。
もし、時の悪戯がなかったなら、まったく変わったかもしれないね。

人の出会いというものは、悲喜劇の連続だ。
良き夫婦を、良き妻を演じ続けるのはさぞ辛かっただろう。
親を悲しませたくなかっただろうからね。

もう少しの辛抱さ。
最低限の親としての責任を果たし終えるからね。

遅れすぎた再会が、伴侶への幻滅を加速させる。
それは理解できるような気がするよ。
無頓着、無知、無慈悲・・・
「無」と付くものの全てを持ったような人だね。
最悪なのは、そのことに本人が気づいていないことだね。

二重に生きることを習得したことが、良いのか悪いのか?
僕には何とも言えないよ。
割り切りと言ってしまえばそうなんだろうけど・・・。

世の中には、同じような境遇の人が多いんだろうな。
諦め、最低限の義務、自分だけの光・・・

僕は、そっと見守るだけだ。
そのことを、ずっと前のあの時に託されたように思う。
そう確信している。


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母性

「初めから失われていて、生涯、決して手に入れることのできない父性」・・・。

               二重生活(小池真理子)


僕の場合は、【母性】なのだが・・・

加えて、【家庭的温かさ】とでも言おうか、これらの欠落が、僕という人間を形成

するにあたって、大きく影を落としているのは明らかだ。

一つの家庭を築き、子供たちや孫たちに囲まれた生活であっても、その影は消えて

しまうほど薄っぺらなものではない。

家の中のざわめきの中で、ポツンとしている自分がいる。孫たちのはしゃぎ声や

テレビアニメの騒音さえ、耳に入ってこないくらいの深淵の中で、僕は膝を抱えて

顔を埋め、かすかな母のイメージを確かなものにしようと彷徨い歩く。

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