二重生活

きみは悪くない。
精一杯正直に生きてきたさ。
親の意向に従ったことも、きみの環境なら仕方のないことさ。
もし、時の悪戯がなかったなら、まったく変わったかもしれないね。

人の出会いというものは、悲喜劇の連続だ。
良き夫婦を、良き妻を演じ続けるのはさぞ辛かっただろう。
親を悲しませたくなかっただろうからね。

もう少しの辛抱さ。
最低限の親としての責任を果たし終えるからね。

遅れすぎた再会が、伴侶への幻滅を加速させる。
それは理解できるような気がするよ。
無頓着、無知、無慈悲・・・
「無」と付くものの全てを持ったような人だね。
最悪なのは、そのことに本人が気づいていないことだね。

二重に生きることを習得したことが、良いのか悪いのか?
僕には何とも言えないよ。
割り切りと言ってしまえばそうなんだろうけど・・・。

世の中には、同じような境遇の人が多いんだろうな。
諦め、最低限の義務、自分だけの光・・・

僕は、そっと見守るだけだ。
そのことを、ずっと前のあの時に託されたように思う。
そう確信している。


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posted by わたなべあきお | - | -

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