これはずいぶんと後になって分かったことなんだが・・・
S先生は、姓が<柴田>で、旦那はなんと!当時超有名なロックバンド「村八分」
のヴォーカルだった。彼がアメリカを放浪していたころ知り合ったみたいだ。
当然ながら田舎者の僕には無縁の世界だったのだが、恰好だけはヒッピーまがいで
ローリングストーンズにかぶれていたのだから、知っていてもよさそうなものなの
だが、アンダーな世界だったのだろう・・・まったく知らなかった。
それに彼女もまったくそのことは言わなかったし・・・。
加えて・・・フォークへ移行する端境期でもあって、すれ違いのような世界だっ
た。
ギャップが織り成す人生模様
ひとは何処で誰に逢うかわからない。
S先生はミセスとはいえ、僕と同世代だったわけなのだが
田舎出のぼんくらには、はるかに年上に見えた。
でも逆にアメリカ人の先生には、純粋無垢な青年と映ったのかもしれない。
肝心の英会話以外でも、たくさんのことを教えてもらった。
まさに手取り足取り・・・。
そこには、外国人そして女性という微妙なクッションがはたらいて
ちょっと危険な領域も、僕には鵜呑みに信じられる安心感があった。
それがまた、先生には意外であり新鮮であったのか・・・
急速に距離が縮まって行った。
スバル360でのドライブや、薄暗い喫茶店での課外授業や
プライベートルームでの微妙な関係や・・・
短期間ながら、なんと多くのことを学んだことだろう。
二十歳前の僕を知る人間からすれば、まさに別人と見えたことだろう。
一方先生は、日本的な原石を刻み磨く喜びを持ったのかもしれない。
今になって思えば・・・の話である。