「ねぇ〜、胸が痛いってことある?」
呼び出されて宍道湖の防波堤に腰かけていたとき
突然放送部の後輩の彼女が聞いてきた。
「えっ?」
僕はどう答えていいのか戸惑った。
「う〜ん・・・経験はないけど、あるんじゃないかな」
「好きなひとでもできたんか?」
彼女はしばらく黙って俯いていたが
突然立ち上がり、くるっと反対を向いて
ひらりと地面に飛び降りた。
スカートを翻したその動きの中に
「あっ、もしかして・・・」と思ったとき
彼女はもうかなり前を歩き始めていた。
何とも言えない複雑な想いが、彼女の背中に漂っていた。