どんよりとした曇り空の下
二羽のカラスが
テレビアンテナの上と電柱の天辺で
羽を休めている
何を考えているのか
獲物でも物色しているのか
もう半時間近く動こうとはしない
雨が落ちてきた
鳥の羽は防水だよな
それにしてもまったく動く気配はない
彼らの向こうの山が灰色と化し
稜線がぼやけてきた
雨音が聞こえるほどに
強く振り出してきた
彼らは?と思ったとき
一羽が飛んだ
誘われるようにもう一羽も
近くの造園屋さんの茂みの中へ消えて行った
それにしても
僕は何をしている?
雨音が疑問符の連続に聞こえてくる
もう・・・
山並は見えなくなってしまった
二十歳の夏
「父よさらば 哀れな継母よさらば 兄よ 姉よ 義弟よ・・・」
と綴った僕は、何と傲慢だったのだろう
父の慟哭の涙も知らず
義母の辛苦も思いやらず
兄、姉の胸の痛みにも気づかず
義弟の罪の無さも省みず・・・
言い訳がましい気もするが
敢てそう言い放つことでしか
自分を叱咤する方法がみつからなかったんだ・・・きっと
行く当てもなく放り出された流れ星に似て
僕は宇宙を彷徨った
ぶつかる天空の塵の痛みは、殊の外激烈で
燃え尽きるまでの消滅を覚悟した
そして・・・確かに消えた・・・無くなった
愚かにも目覚めた時
僕は蓮の花の上に横たわっていた