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背景の記憶(117)

 おまえの街はどこかと訊ねられても、いまのわたしは、ここだというべき場所をもっていない。多少の懐旧の心情を混えれば、少年の頃の街が蘇ってくるが、いたるところの十字路や露路すじに、悪い表象が立ち塞がっている。それを避けようとすれば街のすべてを拒絶するよりほかない。幻想の首都をさがして、いくつもの街を通り過ぎてきたような気がするし、少年の頃の街も、何べんか縮まり変形してきたような気がするが、心象のあちら側に、何か気配のようなものが感じられるかぎり、そこを目指すよりほか仕方ない。知りびとたちは死に、腐敗した透明な空気に変身している。                       (吉本隆明)

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posted by わたなべあきお | - | -

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