○いい年をした男が、餓鬼のころからの淡い思いを未だに引きずっているというのは
恥ずべきことに違いありません。
○くだらない美意識を後生大事に持ち歩いて、すべてを自分が定めた様式の中に
おしこめようとして…
○二十代の初めのころからだろうか、私は自分が長い旅をしていると思うことが
よくあった。帰る場所のない旅、行き着く先の想像もつかない旅である。
「欲望」小池真理子
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一小説の中の何気ない一文であるが、自分のことを言い当てられているようで、
傍らのメモ帳に書き記した。自分だけではないんだという安心感と同時に、
言い当てられてしまった気恥ずかしさと…
しかし、小説の構成上欠かせない韻文であることは理解出来る。
こういう男はたしかに存在するのだ。生い立ちやのその後の性的行動も含めて…。
まるで自分がこの小説の題材になったかのような錯覚に陥る。
自分の中のもう一人の自分が嘯く
いや、違うか…
腹を立てている
何に対してか? それは判然としない
けれど、何かに苛立っている
これは久しい感慨だ
自己の中の何かが動き始めている
挑戦? 対抗? 復讐?
自分でも怖いくらいの言葉たちが沸き上がる
僕はいったい何に立ち向かおうとしているのか
鈍感男の真骨頂
僕は号砲が鳴って、はるか遅れて
スターティングブロックを蹴った
目の前の出来事を軽く見てはいけない。今の一言、今の判断、今の沈黙、今の不誠実は
その瞬間だけで終わらない。誰かの心に残り、次の行動を生み、次の時代の空気を作る。
戦争も、差別も、宗教対立も、政治的な憎悪も、突然生まれるのではなく、小さな記憶の
積み重ねが、ある時に神話化され、正義化され、怪物のようになって現れる。
目の前の出来事の中に、未来の歴史の種がある。だから今、どう行動するか、それを
どう語るか、どう受け止めるか、人間の責任はそこにある。愚かな選択による自業自得は
本人や為政者の勝手だが、それが歴史となる時、多くの人を最悪の負の連鎖に追い込む。
【長松清潤】