あれは僕が結婚をする前の頃だったろうか?
父は手紙の中で「おまえは、<脱出>の名人だな・・・」と
誉め言葉なのか諫めの言葉なのか・・・分からないような一文があった。
たしかに僕にはその歳までに、一度と言わず二度、三度<脱出>をした。
自分的には・・・
「孤独になろう・・・自分を見つめよう・・・」だったのだが
された側からすれば「なんて身勝手な」「迷惑この上ない」
行動であったに違いない。
<脱出>は殻を破る〜最短、最善の道だ。
<今>は・・・
躰ごとの脱出ではなく、心の脱出だ。
それこそが真の<孤独>と言うものだと確信している。
吹いてくる風が頬や胸板にあたるなら、
むかい風に立っていることを学びなさい。
目の前に登り坂と下り坂があったなら、
一度は(いや二度でも三度でも)
自分から選んで登り坂を歩きなさい。
登り坂を歩きながら、
少しだけ息苦しさもある中で、
もう一歩、いやもう一歩登ってみましょう。
きっと何かが、そこにあるかもしれないから・・・。
私たちのいきていく道は、
やってみなければ見えないもの、
出逢うことがないものがたくさんあります。
伊集院 静