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二十歳の詩集

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posted by わたなべあきお | - | -

ひ と り

     ひ と り


意識の奥で
ボウーと重なりあう
いくつもの停車場
六十五歳という停車場で
私の父が行き 義父が去りました
そのずっと向う側
私が一人佇んでいます

歳月という列車は ほの白く
行く先は不明
月明かりに煙る列車の中には
何もありません
いつの頃からか
私の心も行方不明なのです
スウーと擦れ違う光の中に

主人と子供の影が
浮かんでは どこまでも遠ざかり
微かに 自己不信が漂うのてす
すべての人と 私を隔てるものは
成長しきれない感傷と
自己愛でしょうか
心の叫びは
いつも他人の心に届かないまま
亡くなった人の様に
闇の中に呑まれていきます
四十をすぎて
なくした自信と 心の疲れは
一瞬のうちに
微かな呼吸にも蓋をして
生きる支えを私ごと
闇に捨て去られた様に思うのです

遠い意識の向う側
音も立てず
列車が闇に向かいます


     石見の詩人【栗田好子】


※栗田さんは、高校三年生のときの同級生
はるか四十数年を経て、還暦同窓会で再会した。
後日、送られてきたのがこの詩集だった。



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夏休み

ボー! ボー! 
お腹に響くような汽笛がなった

あれは貨物船だな
(心のなかで呟く)
それでなくても客船はこんな時間には出ない
貨物船の汽笛はどこか物悲しい

湾を見渡せる特等席に走り登る
夕日を浴びながら
船がゆっくりと旋回して湾を出ていく

外海も凪いでいるようだ

あちこちの家から
夕げの匂いと煙が流れてくる

静かだな…
こどもながらに大人びた思いを抱く

この夏休みが終われば
またあの喧騒の中に置かれるのかと思うと
帰りたくなかった…

    ※小学生時代の夏休みを思い出しての詩作

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おかあさん

   おかあさんはわたしを生んだの

おかあさんはわたしを生んだの
それから
わたしをそだてたの
それから
わたしをたのしみにしてたの
それから
わたしのために泣いたの
それから
それからあとはいえないの


   【サトウハチロー】

……………………………………………………………………………………………

まさしく…それからあとが言えなくて…

母も言えなくなってしまって…

お盆から九月の初めにかけては、なんとも気だるく重苦しい期間です

やがてやって来ます…

僕の誕生日と…その明くる日の母の命日

皮肉な時の巡り合わせです

「この子の三つのお祝いに、それまで私は生きて…そして…明日逝くのです」


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     【いわさきちひろ】

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咀嚼

心は 顔に出る

心は 言葉(語調)に出る

心は 行動に出る


それを意識した時

両方の目尻を下げてみる

出かかった言葉を飲み込んでみる

確かな正しい一歩を踏み出してみる


咀嚼のない言動は 人を傷つける

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柱時計

     柱時計

  見なくなりました

  柱時計

  長針と短針と

  左右のネジを巻きました

  振子の調節も微妙でした

  背が届かないから

  踏み台に乗ってやりました

  デジタル化時代には

  もう骨董品でしょう

  でも…

  あの…ボン ボン ボンの響きが

  遠い昔へ連れていってくれます

  ボンボン時計とも言ったような…

  優しい声の目覚まし役でした

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おかあさん

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       【いわさきちひろ】


……………………………………………………………………………………………………………………

      泣き真似をして
      母を待っ
      それでも叶わないと
      本泣きになる
      そこでやっと
      母が来る

      その心のすべてを
      母は知っている
      知っているのに
      知らんぷりをする
       
      

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自爆

     自爆


  自爆する

  自死ではありません

  何が吹き飛ぶが分かりません

  断わっておきます

  影響部は己自身止まりです

  僕自身の内奥爆発です

  そして…また…

破片集めを始めるのでしょう

  終わりのない
  
  囚人のような作業です

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悲しい時には

    悲しい時には

 悲しい時には
 台所で
 玉ネギを切って ごまかした人

 うれしい時には
 庭に出て
 体操をして ごまかした人

 そのごまかしの
 なつかしさ

 わたしも台所に行って
 玉ネギをまな板にのせましょうか

      【サトウハチロー】



  
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旅立ち

♪私の瞳がぬれているのは
 涙なんかじゃないわ 泣いたりしない
 
 この日がいつか来ることなんて
 二人が出会った時に 知っていたはず

 私の事などもう気にしないで
 貴方は貴方の道を 歩いてほしい

 さよなら言わずに 笑ってみるわ
 貴方の旅立ちだもの 泣いたりしない

 言葉はいらない 笑顔を見せて
 心の中の貴方は いつもやさしい

 私は泣かない だって貴方の
 貴方の思い出だけは 消えたりしない

 私の瞳がぬれているのは…
……………………………………………………………………………………………………

「22歳の別れ」と一緒で、類似した体験がある。

どちらも女性の側の心境ではあるが…

後に思えば、心の中は言葉とは真逆であり、

全部とは言わないまでも、揺れ動く心の現れと受け止めるべきだった。

この分野での…たら、…れば、は禁句中の禁句だ。

起こってしまったことは、二度と取り戻せない。そして…

あの頃には二度と戻れない。

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