しばらく臥せっていました。
季節の変わり目には、決まってこうです。
「そういう体質なんやね」
見舞いの電話をくれた義母が言いました。
おそらくその通りなんでしょう。
何か月分もの睡眠不足を補うかのように
深く長い眠りがありました。
土日が入っていたからかも知れません。
相変わらずストーリーの不連続な夢を
代わる代わる見ました。
ひとつだけ言えることは・・・
こないだまで、急坂を手も使って登っていた僕が
今度は、頂上の見える緩やかな山稜を
ゆっくりと確実に歩を進めていることでした。
何かの暗示かな・・・?
そう信じたい夢でした。

誰もいなくなったスナックで
照明も落とした客席で
僕は独り夢の中に居た
そこに聞きなれたイントロが流れ出した
頼んでもいないのに・・・
「♪そこにあるから追いかけて 行けばはかない逃げ水の・・・」
僕はフラフラと立ち上がり歌い出していた
「♪そんな風な生き方が 幸せに近い」
「♪ラララ ラララ ・・・」
薄ぼんやりとした空間に君の笑顔を見たような気がした
二曲目が始まった
ママ・・・よく覚えてるよね〜僕の歌う歌
「♪好きな誰かを想い続ける・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからどうしたのか
思い出せないんだ
台に上がり、首をロープに通そうとしたその時、チャイムが鳴った。
運命のチャイムだった。
二人を見た時、石神の身体を何かが貫いた。
何という綺麗な目をした母娘だろうとと思った。それまで彼は、何かの美しさに見とれたり感動したことがなかった。
花岡母娘と出会ってから、石神の生活は一変した。自殺願望は消え去り、生きる喜びを得た。
あの母娘を助けるのは、石神としては当然のことだった。彼女たちがいなければ、今の自分もないのだ。身代わりになるわけではない。これは恩返しだと考えていた。彼女たちは身に何の覚えもないだろう。それでいい、人は時に、健気に生きているだけで、誰かを救っていることがある。
「容疑者Xの献身」(東野圭吾)
僕は思う・・・