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背景の記憶(345)

「むっつり助平」という言葉がある。

僕はその言葉をもろにぶつけられたことがある。

彼は当時の一方的片思いの彼女が、僕に気があると邪推してのことだった。

そのような事実はあろうはずもなく、僕はただ耐えるしかなかった。

生来、その方面では鈍感極まりない僕は??であった。だって当の本人とは

言葉も交わしたこともなかったのだから……。

しかし、事実はそのまた逆だった。

対象の彼女との距離が急接近したのだった。

いつもの習性で、僕は遠くから見ていた。人も物事も……。

ところが、彼女は違っていたのだ。

僕の形無き習性を、もろに受け止めてしまったのだった。

成就と言えば成就、悲劇と言えば悲劇。

またやらかしたか!

これは卒業したはずだった。

自分の心の中だけのドラマのはずだった。

不思議な現象だ……。

意は現に成る。

この時ほどテレパシーを如実に意識したことはない。

posted by わたなべあきお | - | -

悲喜劇

僕はこの世の【雑事】とまでは言いきる自信は無いが、一種の厭世感の中に

あることは確かなようだ。 政治にしろ何にしろ、滑稽極まりない茶番劇としか

映らない。責める側も責められる側も……。

それは、日本国で言えば、わすか数百年前とも何ら変わることはなく、

地球規模て言っても、同じことの繰り返し。

大局的に言えば、自ら発明したモノに牛耳られ、抹殺されようとしている。

この悲喜劇。 

そのスケールは、自分の数メートルの範囲でさえ同類としか言いようがない。

人類は人類が首を締める。

人間は自らが首を締める。

それを歴史の大展開の中で、どれだけの人が実感しているのだろうか?

凄まじいはかりの世の中の変遷、展開の中で、動じないとする自分が、

果たして正解なのか?正論なのか?

「一切の善 一善に帰す」が、禅問答のように心の中を駆け巡る。 

posted by わたなべあきお | - | -

背景の記憶(344)

僕は何かに絶えず駆り立てられるように、その日その日を過ごしていた。

愛情の一番終わりの境界……その一線がハッキリと眼前に表出した。

涙は悲しみの表出てはなく、朝の草を飾る露のように自分の睫毛を濡らした。

それを機に、僕はピエロの仮面を脱ぎ捨てたような衝動を覚えたのだった。

脱出の日、片付けるものなど何一つ無いと言ってよかった。着の身着のまま

僕は脱出した。父の「お前は、脱出の名人だな……」という言葉が甦った。

スリルという言葉はあてはまらない、僕はこういう瞬間にいわば慣れていた。

18年間て唯一習得出来た特殊な【芸】だったのかも知れない。

半世紀以上を経た今日、僕はその芸を再現出させようとする自分に

驚きを隠せない。習癖は冬眠から覚めて甦るのだ。

あの時、「父よさらば、兄姉よさらば、可哀想な継母よさらば……」

と綴った言葉がまざまざと蘇ろうとしている。

結局のところ……その行き先は、実母の懐なのだが……

そしてまた、……ということは【X】にしかあり得ないのだが……。

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背景の記憶(343)

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京都の東南、坂の上のアパートには

これといった家具は一つもなくて

机代わりの電気コタツとダークブルーの寝袋がひとつ

階段の入り口ドアには

シルビーバルタンのポスターが一枚

朝に送り出し、夜に迎えてくれた

彼女の顔が別れたひとと重なって

僕はその唇にタッチするのだった

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明日に向かって

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何気ない毎日が 
風のように過ぎていく

あの日の眼差しも
あの日の囁きも
遠くへ遠くへ消え失せてゆく

思い出に浸ることは
涙と嘆息の誘い水にはなっても
明日の光とはなり得ない

どんなに悲しかったことだって
今となれば貴重な思い出だ
今日を生きる糧にさえなる

僕は君にとっての
そんな存在であり続けているだろうか
心の灯的存在のままだろうか
雄々しく明日に向かうための希望の源泉だろうか

僕はそのように生きているのだが……

posted by わたなべあきお | - | -

波動

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突然途絶えた音信

それを確かめる術もなく

ただ悄然と立ちすくむ

一個人を翻弄する家庭内の黒い渦

夫婦であれ……親子であれ……

どの立場であれ

投げ出さないあなたのことだから……

僕としては

波動を信じて 心を送り続けるしか術がない

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堪忍

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流離い

もうひとりの自分が叫ぶのです

「僕は旅に出ます」

そして、念を押すように付け加えるのです

「もう、此処へは帰っては来ません」

その真向かいの自分が応えるのです

「そうしなさい 僕もそうしたかったのです」

ふたりの自分の意見が一致したわけですから

当然の結果か生まれたはずでした

しかし……

彼は動きませんでした

心の浮遊のみに止めたのです

これを最高、最善の選択と言わずして、何と言うのてしょう

彼の心の中の小宇宙は

何ものにも比較、対峙できないのでした

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天然

少女のような【あどけなさ】を魅せる あなた

意識的なソレを見抜く目は

だれよりも持ち合わせているつもり

【天然】

これは本当の天然にしか出せない 【色香】

実年齢的に老人の入り口でも

あえて僕は褒め言葉として送りたい

posted by わたなべあきお | - | -

反射

書くということは、やっぱり

何か病か、絶望のようなものに

犯されているときの反射なのではあるまいか。


      【開高 健】



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posted by わたなべあきお | - | -

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