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手紙

手紙を待っていた時代が懐かしい

相手の心なのに

その中身を想像して膨らませた


画一的な文字の羅列でなくて

相手の心が

文字の中に浮かび上がってくる

手書きの便箋に踊った左の胸


あなたの流れるように美しい

万年筆で書いた文字たちは

その言葉以上に

僕の心を揺さぶった


あれだけ待ち続けていて

しっかり受け止めることができたのに

返せない僕がもどかしかった

ガリ版切りのような尖った文字が

僕の想いを遮断した


目を見ればわかるよ

そんな言い訳が

僕の心の中を駆けずり回った25.8.13-3.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

背景の記憶(139)

     帰 省

「やれ、帰ったかい!暑いのを〜」

「水・・・浴びんかね」

いつ帰っても、父は必ずこう言った。

水浴び(行水)なんて言葉は、父親世代までだろう。

今なら、「シャワーでもせんか」的な感覚だな。

言われた通りに水浴びをして、扇風機の前で涼んでいると

いつの間に出かけたのか、麦わら帽子を被った父が帰ってきた。

手には大きなスイカがぶらさがっている。

「よう冷えちょうけん、食わぁや」

とにかく父はよく歩く。

バスの3〜4停留所くらいの距離はスタスタと平気だ。

長寿の秘訣は脚力・・・たしかにそうだと思う。

歩けなく(歩かなく)なったら見る見るうちに老化は進む。

しばらくすると台所で何やら音がする。

見ると、素麺を手早く湯がいてザルに移し替えている。

父は長年、義母の介護をし続けているから、何事も手際よい。

男のおおざっぱさは仕方ないとしても、ちょっと真似のできないことだ。

僕がテレビで高校野球のの中継を見ていると、父は・・・

広告チラシの裏の白いのを束ねたものに、何やら鉛筆を走らせている。

いい句が浮かんだのか・・・

久しぶりに帰った息子の横顔でもデッサンしているのか・・・

こういうところは見習いたいなぁ〜と思う。25.8.13-1.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

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