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薩摩の女(ひと)

偏見ではなくて、なんともトランジスターな娘だった。

背丈は僕の肩までもなかったかもしれない。

九州女らいしく明るくてハキハキしていて面倒見が良かった。

五つも年下なのに、時々お姉さんのような振る舞いをして、僕を戸惑わせた。

達筆だった。性格そのままの男性的とも思える字を書いた。

僕は左利きを無理やり直されたものだから、全部に力の入った画々の字しか

書けなかった。でも、それはそれで彼女は僕の字を褒めた。

「字は体を表す」なんて、解ったようなことを口にした。

送別会となってしまった会社の新年会の時、「青春時代」をデュエットした。

歌の題名の通り、複雑怪奇な青春時代の一つの幕が下りた。



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出雲の女(ひと)

同姓だった。

三つ年上で、彼女のお母さんも先生だった。

県境の米子で働いていた。

米子は同じ山陰なのに、なぜか都会的な雰囲気の街だった。

東京スタイルというか、垢ぬけた雰囲気だった。

山陽との交通の要所だったからかもしれない。

お母さんや妹さんたちは、出雲大社に住んでいた。

理由は聞かなかったが、何かの理由で親夫婦の仲は良くなかったと聞いた。

いつものパターンで、僕たちは姉と弟のような関係だった。

詳細を知らない人から見れば、それで通ったかも知れない。

夫々の親たちは、これまた夫々に悩みを抱え呻吟していた。

その一種ドロドロとした闇の中で見つけた、灯だったのかもしれない。

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