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夕立

急に雲行きがおかしくなったので

僕は洗濯物を取り込みに

ベランダへ出たのです

そこに一匹のアブラゼミが

ひっくり返っていました

まだ生きているようだったので

僕はそっと取り上げ

樹のある方向へ逃がしてやりました

ところが

勢いよく羽ばたいたかと思ったら

隣の家のコンクリートのところに

またしても仰向けで落ちてしまいました

なんでまた・・・

僕は複雑な気持ちで

洗濯物を取り込みました

やがて

ザーっと大粒の雨が

風を伴って落ちて来ました

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遠雷

どこかでチリッと光ったような

僕はかすかな音として感じた

数秒後・・・

ゴロゴロ ゴロ ゴロ〜ン

雷神のお腹の

調子でも悪いような

なんとも情けないような音が

淀んだ空に

鈍く響いた

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言い聞かせ

夜中に降った雨が上がって  

む〜っとした湿気を含んだ空気が

からだに纏わりつく

早朝の坂道は人影も疎らで

雨を含んだアスファルト面が

まだら模様を形作っている


雨量が命を繫ぐほどでもなかったのか

相変わらず数匹のミミズが

路上で息絶えている

先の豪雨の激流が嘘のように

排水路はチョロチョロと物悲しい流れだ


元気な子供たちとも出くわさない

そうか夏休みだもんな

誰に言うわけでもなく呟いてみる


あれほど豪華に咲き誇った向日葵たちも

いまは色あせて寂しくうな垂れ

バトンタッチと言わんばかりに

紺色の朝顔が蔓のてっぺん辺りから咲き始めている


止まっているようでありながら

時は確実に刻まれて行く

自然の移り変わりと同じに

自分も刻一刻と

然るべきところに向かっているのだと

冷厳に言い聞かせる


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おはようございます

「おはようございます!」

坂道で元気な声が僕に投げかけられた

あっ・・・オ・ハ・ヨ・ウ・・・

咄嗟のことで、僕はぎこちない返事をしてしまった

彼女は私立の中学生か

制服姿の背筋をぴんと伸ばして颯爽と歩いて行った

坂の上の家の娘さんかな

引っ越してきたんだろうか

今どき珍しいこの場面に

僕は久しぶりに爽快感を覚えた

次は僕から挨拶をしよう


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ぴったりの言葉を探し続けて
見つからず、思いつかず
一言も書けなんだ

ひとはなぜ日常の中に
思いを凝縮できないんだろう

送った人たちが
亡き人を形作ってゆく
それぞれの思い出と感傷で

聞こえているかい
見えているかい
届いているかい

霊界を彷徨いながら
しかし、確実に
この思いは届く

それこそ
絆と言うべきだ



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シグナル

僕は 真底正直者か
僕は 己を飾っていないか
僕は 言葉に尾ひれを付けていないか

幾千もの弓矢が降り落ちる
段ボールの楯を突き抜ける
潔く立ち上がれば矢は蝶に変化する

僕の想いは無言では届きませんか
言多ければ多いほど虚しさがつのります
僕の振りかざした拳は見えないでしょうね
どこへも落としようのない拳ですから

S・O・S
僕の手旗信号が見えますか
北の大地の女神よ
大都会の理解者よ
アルプスの麓の仙人よ
古都に住む清貧の人よ
孤島に生きる文人よ

僕は・・・
星空の中で旗を振る
懸命に旗を振る

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ふたり

想い出の中に生きて・・・
想い出に勇気づけられて・・・
この空間がなかったなら
僕は絶えてしまう

彼は現実に生きて・・・
罵詈雑言にも耐えて・・・
必死に食らいついている

彼はもう一人の僕だ

夜と朝の間に
二人はすれ違う
バトンタッチと言えるのか
目と目で合図をして
軽くハイタッチする

おつかれさま・・・
頑張れよ・・・

暗闇と日差しの中に
それぞれが吸い込まれるように
歩き出す

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さぁ〜来い!

僕は蟻になりたい
僕は花になりたい
僕は雲になりたい
いっそ石になりたい・・・

それって
蟻さんたちや
花々や雲や石に対して
失礼だよな
勝手すぎるよ

現実から逃げている
問題を直視していない
いろんな言い訳ばかり考えている

右足を斜め後ろに三歩下げて
両手を前へ突き出して
顎をぐっと引いて
奥歯をしっかり噛みしめて
さぁ〜来い!と
心の中で叫んでみよう

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スローモーション

いつになったら、這い上がれるだろうか

若いころのこの疑問は

たとえかすかでも、光を見ていた

今のこの疑問は

あまりにも時が限られていて

絶望に等しい


若いころの無様は

捉えようによっては、かっこよくさえある

年老いた無様は

どうしようもなく哀れだ


転がり続けたあの頃は

尖った自分が、時に愛おしかった

いま同じように転がり続けたなら

奈落の底へと一直線に落ちて行く


唯一の救いは

その落下の速度を

胸に刻み込むことだけだろう

時速百キロを

あたかもスローモーションのように

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さりげなく

さりげなく〜が僕のモットーだけれど

そこにはいくらかの負荷が働くんだよね

かっこつけるわけでもなく

強がるわけでもなく

自分の内奥では激しく闘っていても

顔や目はサラッとしていたいんだ

できれば・・・

軽く微笑んでいたい

征服感や達成感を

自分だけの宝としてしまっておきたいんだ



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