あのころを思い出せ
終バスも過ぎたバス停で
待ち続けた五歳の夜
あのころを思い出せ
湖岸にふたり腰かけて
待ち続けた瞬間
あのころを思い出せ
海辺の小舟に腰かけて見上げた
満天の星空
あのころを思い出せ
寝袋にくるまって見上げた
果てしない星雲
あのころを思い出せ
六畳一間のアパートの窓から
見つめ続けた町の灯り
あのころを思い出せ
洗いざらしのジーパンと
ブーツで賭けた坂道
あのころを思い出せ
飲むほどに冴えわたり
天に向かい叫んだ飯場の夜
あのころを思い出せ
遠ざかる島影に残した
果てしなき慕情
あのころを思い出せ
灯りを消した湖畔の宿に
残し残された誓いの余韻
あのころを思い出せ
鍵盤を壊れるほどに叩いた
熱くも青い純情
あのころを思い出せ
子どものように無邪気に
追いかけっこをした帰り道
あのころを思い出せ
事故で臥せった枕元に届いた
あなたの優しい笑顔の写真
あのころを思い出せ
雨に濡れて歩く僕に
そっと差しかけられた赤い傘
あのころを思い出せ
引っ越しを手伝った夜
思いもしなかった次の約束
あのころを思い出せ
コスモス畑の真ん中で振り向いた
長い黒髪のきみの笑顔
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自然の猛威
ただただ・・・茫然
前都知事が「天罰」と言って物議を醸したが
擁護するわけではないが
あれは、その土地の人に対する〜と言うよりは
<人類の驕りへの警鐘>という意味ではなかったかと・・・
災害のミニチュア版は
人間の足もとでも起こっている
たとえば蟻
人間の靴に踏みつけられ
ちょっとした雨に押し流され
彼らにしてみれば
大きな岩であり大洪水ということだろう
たかだか50年、100年を単位として
考え生きる人間と
千年、万年を単位として
動く自然界と
この落差は比較にならない
人間言葉で言えば
天界の怒りは
最高潮に達しているのかもしれない
古代人の
自然崇拝は
現代に蘇らすべき
大切な心なのかもしれない
パンチをくらって
仰向けに倒れた
クリーンヒットではない
腹をえぐるようなボディーブロー
目の前がどんどん暗くなってゆく
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言葉には
こんな力もあるのかと
しみじみ思った
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立ち上がって
ファイティングポーズをとろうとして
不覚にも膝を折った
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電話の向こうの
不敵な笑いが見えるようだった
あんな若造にやられるのか
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僕は無言でリングを降りた
歓声も罵声もない
無人のリング
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帰ろう
帰ろう
一人だけでも
待ってくれている
あの場所へ