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傘(青春時代)

いつもの帰り道

降り出した雨に僕が足を速めたとき

すっと傘が差しのべられた

赤い傘の中で君が微笑んでいた



バス停で別れる時

君は傘を渡してくれた

「折りたたみがあるから・・・」

バスの中での気恥ずかしさよりも

君が隣にいるようで

僕はぐっと傘の柄を握りしめた26.6.19-1.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

予感(青春時代)

あなたが後ろから追いかけてくる靴音は

言葉に置き換えられるほど新鮮で

思わず歩調を緩める僕だった

速足のいじわるはできなくて

かと言って振り向く勇気もなくて

隣に並ばれる瞬間が待ち遠しかった

それからの数分間

僕たちは見合うこともなく

交わす言葉もなく

ただゆっくりとした同じ歩調で駅へと向かった

自然に絡まった小指に力を感じたとき

初めて目と目で向き合った

そしてやがて安心しきったように

しっかりと手を握りあった26.6.18-1.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

向こう側

素直になりましょう

たとえ息子の言うことであれ

たとえ孫のような幼子の言うことであれ

素直に耳を傾けましょう

愚かな反論は止しましょう

無意味な繕いも止しましょう

彼らという媒体の向こう側を意識して・・・

謂わしめる存在

ありがとうございます

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(琵琶湖岸)

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裏方さん

裏方は楽しい。

すべてを把握していないと、ほんとの裏方は務まらない。

目立ちたがり屋さんは、前へ前へと出ようとする。

黒子が築き上げた壇上に上って、もっともらしい演説を打つ。

裸の王様が、あそこにもあそこにも・・・。

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さらば青春

青春が蘇って

あの時の、あの場面の

終わり方が違っていたとしたら

僕は幸せだろうか


そんなことはないよな


別れこそエネルギーの源であり

涙こそ優しい笑顔の素粒子だ


きみの結末は知らない

あなたの今はわからない


それでいい

それでいい

眩い青春にさようなら

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見る

見えすぎて息苦しく

見えない方がましとも思ったり

温かかったり優しかったりすることは

見えて感じることが嬉しくて

やっぱり見えた方がいいんだ・・・と



まだまだ巡り合っていない人が

たくさんたくさんいるはずだ

僕が思うホンモノは

かならずいると思って

自分を納得させる



いや待てよ

僕はその人をもうすでに

見過ごしてしまったのかも知れない

実は

見えてなんかいなかったのかも知れない

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     雨に濡れて。

     独り。

     石がゐる。

     億年を蔵して。

     にぶいひかりの。

     もやのなかに。

         (草野 心平)



読点が醸し出す<妙><奥深さ>

実家に立ち寄ったとき、玄関にこの詩の額が掲げられていた。

力強く、どこか寂しく・・・父らしい筆遣いの詩だった。

その時、僕は中学一年の国語の授業のとき

「わたなべ、読んでみろ」と言われて読んだ

同じく草野新平の詩を思い出す。

「瑞々しい欅の若葉を透いた光が・・・」

辛口の先生が、その時言ってくれた・・・

「なんとも<間>がいいな。五重丸だ!」

「放送部のアナウンサー担当だもんな」

僕は心の中で、大きく両の手を突き上げた。

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プチ

プチ断食をやりましょう

プチ断酒をやりましょう

胃袋さん、お大事に

肝臓さん、お大事に



心のおやすみが思いつかない

熟睡かな


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声なき声

死者はむしろ雄弁だ

この世に生きる人たちよりも


母は誰にも増して

僕にブレーキをかけたし

精一杯の応援もしてくれた

おかげで僕は

極端に曲がった道は歩かなかったし

少々の無理はしても無茶はしなかった


もっとも皮肉的だったのは

母が男女の仲に割り込んできたことだろう

結果として受け止めれば

母の言葉が正しかった

そしてその時

確かに僕は母の声を聴いたのだった

まったく親心というものは

言葉には尽くせない

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ピエロ

寂しさや悲しみを隠して

僕はいつも笑っていた

ちょっと小首を傾げて



そんな仕草に

誰よりもはやく気づいたのは

たしかに君だったのだが

見透かされたということが

恥ずかしくて

僕は変に強がって見せたのだった



それさえも見破られて

いつの間にか僕は

君の温かくやわらかな胸の中に

引き込まれていった26.5.5-1.jpg

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