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サイレント

無音の世界に慣れましょう

静寂の極致にわが身を置きましょう

自ら逃げ込んだわけでもなく

誰かに追いやられたわけでもなく

奥深い森のような世界

聴力を奪われたかのような世界

そんな世界で

僕は確認のための声も出そうとはしない26.12.8-1.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

ダウン

砕け散った欠片を集めてみたさ
苛立ちと後悔の中で
あまりの破壊の力量に
ジグソーパズルのようにはいかなくて
ただ寄せ集めただけで
並べ替える気力を失った

こうなることはわかっていたさ
そもそも復元を考えるなら
これだけのパワーは使わなかっただろう

投げやりでもない
捨鉢でもない
やけくそでもない

なんなんだ
この鬱憤は
どこに向けてるんだ
この苛立ちを

超冷静なはずの
もう一人の自分が
どんどん小さくなってゆく

posted by わたなべあきお | - | -

いいじゃない

馬鹿正直でいいじゃない

糞真面目でいいじゃない

器用貧乏でいいじゃない

二枚舌より

要領よしより

人真似上手より

       

posted by わたなべあきお | - | -

銀杏

歩き疲れて 歩調をゆるめれば

脚もとの銀杏の葉が 笑って見える

一枚を掌に乗せ そっと包み込む

歌っておくれ 愛の歌を

踊っておくれ 恋の舞を

そうか

お相手が必要か

もう一枚を 拾いましょう

posted by わたなべあきお | - | -

悪夢

暗闇の中で

僕は落下を始めた

不思議と恐怖心はなかった

地面なのか海面なのか

それらしき場所が近づいたとき

僕は意識を失った


夢現というやつなのか

どこまでが実で

どこからが夢なのか

混沌とした設定に

僕は戸惑いながら

自分の体と心を確認した


母親の胸に抱かれて見る夢に

猫や狸があらわれて

幼子には鬼や化け物のように

恐ろしかった

しがみつく指先の温もりと柔らかさが

唯一の命綱だった


同じ夢を

どこで見るかで

その衝撃や恐怖は

安楽の境地にも変化する

僕を取り巻く猫や狸は

いつの間にか

ウサギやリスにすりかわっていた

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posted by わたなべあきお | - | -

どうしてる

北のきみはどうしてる

病はもう癒えたかな

東のきみはどうしてる

仕事の疲れはとれたかな

西のきみはどうしてる

もう僕のことなど思い出しもしないかな

南のきみはどうしてる

ずいぶんと様変わりしたろうな

同じ街のきみはどうしてる

いちばん近いのに

いちばん遠く感じるのはなぜだろう

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posted by わたなべあきお | - | -

靴音

枯葉舞う坂道の歩道に
可愛らしいリュックを背負った
君の黒いブーツの靴音が響く

茶色のニット帽を深めに被り
小首を傾げてスマホに見入る
場所探しなのか 
待ち合わせなのか
確信したように
君はまっすぐに歩き始める

緩やかな坂道を遠ざかる
小気味よい靴音

posted by わたなべあきお | - | -

smile for me

笑いかけてくれ 僕のために
作り笑顔しか できない僕に
思い出させてくれ あのころのことを
ひたむきに生きて 見つめ合った二人を

サヨナラなんて 思いもせずに
手を握るだけで 勇気が湧いてきた
一日一刻が いつも輝いていた
真っ赤な夕日は 淋しい色じゃなく
明日また逢える 希望の色だった

笑いかけてくれ 今の僕のために
笑おうとしても 笑おうとしても
泣き顔になってしまう 僕のために

posted by わたなべあきお | - | -

言葉

言葉の無力を感じるけれど

それは自分自身に比例しているのだと

思い知らされる


虚しい言葉は

僕自身の生き方の虚しさかもしれない

生き生きとした言葉は

僕自身が希望を見出した瞬間かもしれない

清々しい言葉は

こんなひともいるんだ〜と言う時の感動かも知れない


三歳の孫が

想像もしない言葉を口にする

どこから仕入れた言葉なのか

恐ろしいような

素晴らしいような

複雑な気持ちにさせられる


言葉は生きている

言葉に僕たちは生かされている

言葉には遠大な可能性が秘められている

ピッタリの言葉を見つけよう

僕を代弁する言葉を探し続けよう26.11.11-6.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

タイムスリップ

不気味な静寂が部屋を支配する
外からも音らしい音は聞こえてこない
時折風が隣の洗濯物を揺らすだけ

パソコンで観ているユダヤ人ガス室送りの
映画のせいかもしれない
まるでその時代にタイムスリップしたかのようだ

人間の愚かさはどこから来るんだろう
当事者は自分が後世に裁かれる存在だなんて
思ってもいないだろう

現代も同じようなものだ
明らかな軍服と武器を持たないだけで
やってることは愚か極まりない

市民は無抵抗に追いやられ
運としか言いようのない気まぐれが
人々の生死を分ける

暗闇と無音のなかで
携帯のバイブ音に
現在に引き戻される

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posted by わたなべあきお | - | -

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