うだるような暑さの池の葉陰で
低音の蛙の鳴き声が響く
勝手な通訳を試みよう
「おまえは何を考えているんだい?」
僕は答えてやるさ
「君と同じことを考えているのさ」
鳴き止んだ静寂に
己の愚かさを恥じた
「わ~!」とでも叫べば良かった
そのための静寂の方が
スッキリしたはずだ
体験は素晴らしい
想像をはるかに越える
あの満天の星空
あの遥かな水平線
あの静寂の跨線橋の下
独りではこれ程まで鮮やかには甦らない
あなたと僕
若々しさの鮮烈な色香
思い出しておくれ
僕の顔 僕の声
僕はいつも思い出す
あなたの顔 あなたの声
ただ 気がかりが一つ
僕と気づいてくれるかな
あなたを見つけられるかな
もう半世紀も経っちゃったよ
まわりには誰ひとりいなかつたから
きみの名前を呼んでみた
暗闇の彼方で
声は寂しげに木霊した
もう一度そっと呟いてみたら
すぐそばに君の気配を感じた
そっと振り向く僕に
生ぬるい夜風が頬を撫でた
いろんなことがあるさ
いろんなひとに逢うさ
ぼくらの旅は果てしなく続く
知らない街で愛を見て
ふと立ち止まり
和んでみるのもいいさ
旅はまだ続く
炎天下では
あの頃を思い起こそう
帽子も被らず
ひたすら歩き続けたじゃないか
公園の水が命綱だった
木陰が救いだった
アイスキャンディーが宝石のように思えた
19の夏 ヒロシマ
陽炎に僕の未来を重ね見た