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心眼

きみたちには解るまい
  
日々打算に明け暮れる

きみたちには解るまい


理解せよとは思わない

理解してくれよとも頼まない

所詮

交わらない空間に

互いの心は住んでいるのだから


自分たちの最大限の経験から

速射砲は撃ち込まれる

白煙、黒煙、煙も見えず

それらに都度表情を変え

一喜一憂してみせる


僕は隠れない

僕は逃げない

弾が頬をかすめても

僕は動じない

逃げる姿勢もとらない

直立不動

一刀を握りしめ

心眼をかっと見開く



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泣き笑い

気を楽に持とう
そう思った矢先から
また考え込んでしまう
飛びぬけたと思ったのに
また振り出しに戻ってる

気を楽に持とう
暗い雲が湧かないように
シャットダウンを試みる
どこにそんな隙間があるの
グレーのミストに覆われる

気を楽に持とう
君の笑顔を思い出す
作り笑顔でもかまわないさ
両目の端を押し下げてみる
君は僕の心の中で泣いている

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別離

喪服のあなたは美しかった

不謹慎な想いだったかもしれないが

清楚ななかに

一種独特の輝きを放っていた

故人は還らない

しかし

あなたのなかに

たしかに生きておられる

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夕立

急に雲行きがおかしくなったので

僕は洗濯物を取り込みに

ベランダへ出たのです

そこに一匹のアブラゼミが

ひっくり返っていました

まだ生きているようだったので

僕はそっと取り上げ

樹のある方向へ逃がしてやりました

ところが

勢いよく羽ばたいたかと思ったら

隣の家のコンクリートのところに

またしても仰向けで落ちてしまいました

なんでまた・・・

僕は複雑な気持ちで

洗濯物を取り込みました

やがて

ザーっと大粒の雨が

風を伴って落ちて来ました

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遠雷

どこかでチリッと光ったような

僕はかすかな音として感じた

数秒後・・・

ゴロゴロ ゴロ ゴロ〜ン

雷神のお腹の

調子でも悪いような

なんとも情けないような音が

淀んだ空に

鈍く響いた

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言い聞かせ

夜中に降った雨が上がって  

む〜っとした湿気を含んだ空気が

からだに纏わりつく

早朝の坂道は人影も疎らで

雨を含んだアスファルト面が

まだら模様を形作っている


雨量が命を繫ぐほどでもなかったのか

相変わらず数匹のミミズが

路上で息絶えている

先の豪雨の激流が嘘のように

排水路はチョロチョロと物悲しい流れだ


元気な子供たちとも出くわさない

そうか夏休みだもんな

誰に言うわけでもなく呟いてみる


あれほど豪華に咲き誇った向日葵たちも

いまは色あせて寂しくうな垂れ

バトンタッチと言わんばかりに

紺色の朝顔が蔓のてっぺん辺りから咲き始めている


止まっているようでありながら

時は確実に刻まれて行く

自然の移り変わりと同じに

自分も刻一刻と

然るべきところに向かっているのだと

冷厳に言い聞かせる


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おはようございます

「おはようございます!」

坂道で元気な声が僕に投げかけられた

あっ・・・オ・ハ・ヨ・ウ・・・

咄嗟のことで、僕はぎこちない返事をしてしまった

彼女は私立の中学生か

制服姿の背筋をぴんと伸ばして颯爽と歩いて行った

坂の上の家の娘さんかな

引っ越してきたんだろうか

今どき珍しいこの場面に

僕は久しぶりに爽快感を覚えた

次は僕から挨拶をしよう


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ぴったりの言葉を探し続けて
見つからず、思いつかず
一言も書けなんだ

ひとはなぜ日常の中に
思いを凝縮できないんだろう

送った人たちが
亡き人を形作ってゆく
それぞれの思い出と感傷で

聞こえているかい
見えているかい
届いているかい

霊界を彷徨いながら
しかし、確実に
この思いは届く

それこそ
絆と言うべきだ



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シグナル

僕は 真底正直者か
僕は 己を飾っていないか
僕は 言葉に尾ひれを付けていないか

幾千もの弓矢が降り落ちる
段ボールの楯を突き抜ける
潔く立ち上がれば矢は蝶に変化する

僕の想いは無言では届きませんか
言多ければ多いほど虚しさがつのります
僕の振りかざした拳は見えないでしょうね
どこへも落としようのない拳ですから

S・O・S
僕の手旗信号が見えますか
北の大地の女神よ
大都会の理解者よ
アルプスの麓の仙人よ
古都に住む清貧の人よ
孤島に生きる文人よ

僕は・・・
星空の中で旗を振る
懸命に旗を振る

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ふたり

想い出の中に生きて・・・
想い出に勇気づけられて・・・
この空間がなかったなら
僕は絶えてしまう

彼は現実に生きて・・・
罵詈雑言にも耐えて・・・
必死に食らいついている

彼はもう一人の僕だ

夜と朝の間に
二人はすれ違う
バトンタッチと言えるのか
目と目で合図をして
軽くハイタッチする

おつかれさま・・・
頑張れよ・・・

暗闇と日差しの中に
それぞれが吸い込まれるように
歩き出す

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